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春名 幹男
2018/03/27

独裁者VS独裁者 米朝会談は予測不可能なリスクに満ちている

準備を担う情報機関は、外交交渉ではズブの素人ばかり

 就任から1年以上過ぎても混乱が収まらないトランプ政権のホワイトハウス。今度は、ドナルド・トランプ大統領が北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長との首脳会談開催で合意した。

金正恩朝鮮労働党委員長 ©共同通信社

 首脳会談では一体何が決められるのか。米政府が準備チームを始動させたと伝えられた矢先、大統領はマクマスター補佐官(国家安全保障問題担当)を解任した。

 果たして、十分な準備が行えるかどうか。予測不可能な首脳会談はリスクに満ちている。日本の安全保障に直接的影響を与える首脳会談の行方を探ってみた。

即断の裏にはトランプ大統領の過信

 北朝鮮は、20発以上のミサイルを発射し、水爆実験も行ったとされる昨年1年間から一変して、今年は「ほほ笑み外交」に転じた。

 狙いは明らかだ。昨年と同じペースで核・ミサイル開発を続けた場合、アメリカから攻撃を受ける可能性が高まる。厳しい制裁の効果が出て、経済に悪影響が出始めたこともある。昨年11月29日、米国本土に到達する規模の大陸間弾道ミサイル(ICBM)発射に成功して「ひと区切り」を付けた。

ミサイル実験はこれで終わるのか ©getty

 実際には未完成なのに金委員長が「国家核戦力の完成」を宣言して、対話路線にカジを切ったのは、形式を整えただけに過ぎない。

 平昌五輪をきっかけに南北対話が進展すると、すかさず韓国特使を通じて米朝首脳会談を提案し、トランプ大統領は何の条件も注文も付けずに即断、「5月までの首脳会談」開催を決めたのだった。

 その経緯から浮かび上がったのは、トランプ大統領の「過信」と、戦略を欠く彼一流の「政治ショー」である。

 政治も外交も経験がないにもかかわらず、「自分が金委員長と会えば北朝鮮の核問題を解決できる」と自己能力を過信するのは、ビジネスマンとしての成功体験が身に染みているからだ。ただ、アメリカのような超大国をトランプ大統領の能力だけで運営できないのは自明。有能な補佐官、閣僚らを据えて権限を委任すると同時に、総合的な戦略観を持つ参謀が必要だが、「才能不足」は否定できない。違う世界で名を上げた人間を使いこなせないばかりか、気に入らない高官を次々短期間で入れ替える。これではまともな政治などできない。

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