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上原浩治の復帰が巨人軍と巨人ファンにもたらしたもの

文春野球コラム ペナントレース2018

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背番号11の役割は巨人の「過去」と「今」を繋げること

 もちろんずっと巨人を見続けてきた熱心なファンからしても、ゴジラ松井がメジャーリーグに行ったまま現役引退をしてしまったので、この手のスーパースターの古巣帰還ストーリーに死ぬほど飢えていたっていうのはあると思う。どちらにせよ上原浩治の復帰によって、多くの人の最近止まっていた“ジャイアンツ時計”が動き出した。

 4月3日で43歳になる上原だが、貴重なブルペンの一員として戦力的な期待も大きい。同時にそれ以上に託された役割は、「あの頃の巨人」と「今の巨人」のパイプ役だ。勘違いしないでほしいが、栄光の歴史に頼れなんて言いたいわけじゃない。いつの時代もエンターテインメントで大事なのは過去にすがることでも、過去を捨てることでもない。「過去」と「今」を繋げることだ。

 背番号11を入口に今の巨人を楽しんでもらう。最近、球場から遠のいていた長嶋世代のお爺ちゃんを呼び戻せば孫を連れてきてくれるかもしれない。上原や由伸と同世代のお父さんを振り向かせれば家族も一緒にスタンドへ遊びに来るかもしれない。子どもの頃、テレビで観ていたエースに会いに若い世代が友人や恋人とぶらり立ち寄るかもしれない。気が付けば、俺もあなたも上原もみんないい歳さ。長い時間が経ったのだ。オープン戦終盤の客席では真新しい背番号11のTシャツだけじゃなく、嬉しそうに19番時代の10年以上前のレプリカユニフォームを着たファンも目についた。この日のためにクローゼットの奥底から引っ張り出してきたものだろうか。本当にいい光景だった。そして、近年の巨人では決して見られなかった光景でもあった。

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 20日の東京ドームではプロ2年目の吉川尚輝がホームランを放ち、日米通算20年目の上原がマウンドに上がった。冷静に振り返ると、試合には負けたわけだが、みんな終了後は満足そうな顔をしてドームの出口へ向かった。まるであの頃、松井のホームランや由伸のダイビングキャッチを見られたのと同じような気持ちで。

 今シーズンはたくさん東京ドームへ行こうと思う。だって、そこに帰ってきた上原浩治がいるのだから。

 See you baseball freak……

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