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あえて宣言しよう オリックスの戦力は“12球団トップ“である

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/03/30
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 君の声よ遥か届け 夢追い人が行く 虹の上架かるアーチ 明日を拓くだろう

 もうお馴染みとなった「SKY」の冒頭、自分もこのフレーズを口ずさむようになって早くも14年目のシーズンが開幕となった。昔、よく演歌のアーティストを「1曲のヒット作に恵まれれば10年は歌い続ける事が出来る」等と言ったものだが、思えば自分も10年以上この歌を歌い続ける事が出来ている。ありがたやありがたや。やはり現代でもプロ野球の人気は絶大な物なのだろう。

 自分がこの「SKY」を歌い出した2005年。この年のオープン戦で打率4割の数字を残し、シーズンでも存在を強烈にアピールした選手がいた。後藤光尊内野手(現・楽天イーグルスアカデミー・ジュニアコーチ)である。よくオープン戦の成績とシーズン中の活躍に因果関係は無いと耳にするが、それでもオープン戦で華々しい活躍をする選手、特に若手や新戦力が出現すれば、それだけでそのシーズンに希望の光が射すものだ。新しいシーズンという大海に帆を上げるのだから、新しい風に期待が膨らむのは至極当然の事なのだろう。そして2018年オープン戦。今年はまさに新しい風がバファローズ打線を牽引した。そう1番センター・宗佑磨選手と2番セカンド・山足達也選手である。

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ギニア人を父に持つ高卒4年目の宗佑磨

新1・2番コンビに注目!

 宗佑磨選手。高卒4年目の選手で、今年内野手から外野手へコンバートした。ギニア人を父に、日本人を母に持つハーフのアスリートと言うだけで既に期待せずにはいられない。大坂なおみやケンブリッジ飛鳥といったハーフアスリートが世界で活躍する今、それだけでキャラクター性はじゅうぶんだ。若干、楽天イーグルスのオコエ瑠偉選手とキャラクターが被り気味ではあるが、そこはプロスポーツの世界、先に確固たる結果を残してしまえば良いだけである。

 以前から俊足好打の内野手が外野手にコンバートする事で著しいアップデートに成功するケースは多々あった。西武ライオンズ時代の秋山幸二氏(元・ソフトバンクホークス監督)等はその代表だろう。宗選手のスイングスピード、俊足、バネ、バファローズの新リードオフマンとしてその素質は申し分無い。我々はもう彼から目が離せない。

 そして山足達也選手。2017ドラフトで獲得した社会人卒ルーキーである。こちらは俊足の内野手で、オープン戦の活躍でセカンドのポジションを獲得した。ショート、セカンド、サードとユーティリティにこなす事からも、いわゆる天才型なのだろう。大学時代にモチベーションが上がらず野球から離れそうになったというエピソードも、まるで柔道の野村忠宏選手のようではないか、あっ、落合博満氏(元・中日ドラゴンズ球団GM)もそんな感じか。大阪桐蔭高校時代の恩師を訪ね、師の言葉によりモチベーションを取り戻したという話はまさに天才型エピソードの王道である。

ドラフト8位ルーキーの山足達也

 色々とベンチから細かい指示が出る近代野球、バファローズは長く理想の2番バッターを求め続けてきた。一時は1番T-岡田、2番吉田正尚といった、細かい指示の近代野球とは真逆の方向に全力疾走した事もある(自分はそれはそれで大好きだったのだが)。天才型内野手。長く不在だったがどこか懐かしい響きだなと思っていたら、そうかそうか、後藤光尊選手がそうだったんだ。いやいや、逸れた話から元に戻せば、天才型の2番バッターの出現が何よりありがたいのだ。遅れてきたルーキー山足選手。その俊足で一気に先輩選手たちをごぼう抜きしてくれる事だろう。

 この新1・2番コンビが打線を牽引すればバファローズの攻撃陣は他球団の脅威となるのは間違いない。ここからT-岡田や吉田、ロメロにマレーロ、中島、小谷野といった錚々たる面子が中軸を担うのだから隙が無いのは当然である。ここで高らかに宣言しよう。この1・2番コンビが上手く機能すれば間違いなくバファローズ打線は「12球団トップ」である!

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