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中日のルーキー鈴木博志は、与田、森田の系譜を受け継ぐ本格派

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/04/11
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強きをくじき、弱きを助ける「遠州っ子」

 鈴木博の出身は静岡県掛川市。東海道新幹線で浜松から東京方面に1つ目の駅だ。近隣の磐田市の磐田東高を卒業後、同市を練習拠点とするヤマハ硬式野球部に入った。この一帯は古くから遠江国(とおとうみのくに)といわれ、その異称から、この地で生まれ育った子供は「遠州っ子」と呼ばれたりする。

 遠州っ子の気質を代表する歴史上の人物といえば、やはり「森の石松」だろう。幕末から明治にかけて東海道一の大親分といわれた清水次郎長の子分で、浪曲や浪花節にもたびたび登場する。強きをくじき、弱きを助ける俠客の代表格だが、おっちょこちょいで「馬鹿は死ななきゃ直らねぇ」と、からかわれたりもする憎めないキャラクターだ。

 その石松で最も有名な台詞が、「森の石松三十石船道中」に出てくる「食いねぇ、食いねぇ、寿司食いねぇ」。船で出会った江戸っ子が「海道一の親分は清水次郎長」と言ったのに気を良くして大盤振る舞いしてしまうのだが、遠州っ子の義理人情の厚さがほとばしる、何とも心地よいシーンだ。

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 鈴木博もこのようなDNAを引き継いでいるとしたら、チームのために投げるリリーバーとしてまさに適任だといえる。

「森の石松」は出身が掛川市に隣接する森町であることから名付けられたとされる。こじつけではあるが、ドラゴンズの監督も「森」である。リリーフを出すタイミングなど投手陣を操ることに関してはプロ野球随一の巧者である森繁和監督の下で投げる、森の石松・鈴木博志。夢あふれる話と思うのは私だけだろうか。

 プロ野球はいまや投手受難の時代だ。筋力トレーニング、フォーム解析、詳細なデータ分析などの進歩により、打者はパワー、技術とも著しく上昇し、投手は1球1球に体力、精神力を擦り減らして1つのアウトを取るのに四苦八苦している。

 そのような時代に求められる野球のスタイルは、先発投手が6回をメドに投げて試合を作り、7、8、9回にリリーフを1人ずつ繰り出して逃げ切る「勝利の方程式」パターンが理想となる。そのためには質量ともに高い投手陣が必要で、最近のチームはリリーフ陣に強力な新戦力が1人加わっただけでチームの総合力は大幅にアップする。

 鈴木博の加入で、ドラゴンズは又吉、田島と高いレベルでの勝利の方程式を組むことができた。今後は経験が浅い先発投手陣に落ち着きが出てくれば下克上の芽は十分にある。遠州っ子が5年連続Bクラスの汚名からチームを救ってくれるかもしれない。

 付け加えれば私も父は磐田、母は浜松出身で、姓も同じだ。他人とは思えない博志君、チームを躍進させて「スズキはスゴイ!」と一緒に叫ぼうではないか。

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