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村田修一から岡本和真へ 「ふたりの背番号25」を繋ぐ物語

文春野球コラム ペナントレース2018

 2018年春、街や駅は新入社員で溢れている。

 真新しいスーツや眩しいくらいに真っ白なシャツ。新しい何かが始まる瞬間の恍惚と不安が溢れる風景に遭遇すると、すでにその当事者ではなく傍観者になっている30代の自分に気付く。そして思う。いったい彼らはいつまで「若手」と呼ばれるだろうか、と。入社5年……いや3年だろうか? どこの世界も、期待の若手のままでいることを許してもらえる時間は長くない。

巨人ファンが7年前に見た夢の続き

 今、巨人ファンは23歳・吉川尚輝と21歳・岡本和真のふたりの活躍を楽しみに毎日野球を見ている。まるで新入社員の成長と苦悩を見守る気持ちで。16年ドラフト1位の俊足二塁手と14年ドラ1で右打ちの和製大砲候補。そう言えば、数年前まで巨人のこの枠は藤村大介と大田泰示のものだった。彼らもドラフト1位で入団して、若手野手の“ネクスト坂本”を期待された時代があったのだ。

 確か7年前の2011年5月下旬だったと思うが、「1番サード大田、2番セカンド藤村、3番ショート坂本」というスタメンにワクワクしながら東京ドームで観戦したのをよく覚えている。その目の前に広がる風景は確かに巨人の未来そのものだった。だが、人生もプロ野球も計画通りにはいきやしない。藤村は背番号0をルーキー吉川尚輝に譲った形になり昨季限りで現役引退、大田もすでに北海道の新天地へトレード移籍。もしかしたら最近の巨人ファンは、あの頃、幻に終わった未来を再び吉川と岡本に見ているのかもしれない。

オープン戦で活躍し、スタメンを勝ち取った岡本和真

岡本の背負う25番にあの男を見た

 観客が球場で見るのは野球だけじゃなく、そこに流れる膨大な時間だ。すべては終わりのない連続ドラマとして繋がり、未来と同時に、ふとした瞬間に過去も甦る。今シーズン、東京ドームで巨人戦を観戦していると、ファーストを守る岡本を目にしたファンがこんな言葉をよく口にする。

「あれ、なんか村田さんにそっくりじゃない?」

 背番号25のユニフォームに包まれた丸みのおびた背中、どっしりとした下半身、右打席から豪快に放つチームトップの3本塁打に13打点。さりげなく芸術的ゲッツーを継承するこちらもチーム最多の4併殺。まさに全盛期の村田的な活躍だ。

 先日、とある球場配布パンフレットのテキストを担当した際、注目選手にいくつかの質問を書面で提出した。その中の「今季の目標は?」的なシンプルな問いに対して、岡本は「これまで一軍の戦力になれていないので、まずはとにかく試合に出ること。試合に出れば数字はついてくると思う」という答え。いい意味で意外だなと思った。昨年までの岡本は打席でもどこか自信なさげで、慣れない外野守備や三塁守備でいっぱいいっぱいの印象だったからだ。それが4年目の今季、自ら奪ったものではなく用意された背番号25に危機感と責任感も背負いプレーしているように見える。

 3年間でわずか1本塁打。迎えた4年目、そろそろ1軍でなんらかの痕跡を残せなければ、今度は自分が期待の若手じゃいられなくなる。チャンスを逃し続け、背番号も代わり、そうこうしている内にやがて次のドラ1スラッガー候補が現れるだろう。来季には同い年の大学生組もプロ入りしてくる。開幕直後に逆転3ランを放ったお立ち台でお約束の自己紹介ギャグを求められた岡本は、「今年は気を引き締めているんでやりません」とガチンコモードで拒否。2018年の岡本はガチでマジだ。

 さて、いったい村田さんは大人になったこの後輩のことをどう思っているのだろうか? 先月、それがどうしても聞きたくて、栃木ゴールデンブレーブスの25番のインタビューのため小山運動公園野球場へと向かった。