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大山 くまお
2018/04/24

一度ミスっても終わりじゃない。ドラゴンズ・又吉克樹の復活を待つ

文春野球コラム ペナントレース2018 共通テーマ:長野

 やっぱり今年の中日ドラゴンズは面白い。

 地獄のような5連敗を喫したと思ったら、首位広島を相手に起死回生の3連勝! ズタボロにKOされかかっても、まだまだこれからだとパンチを返す気概が見える。

救世主・モヤさま

 なんといっても大きかったのは、救世主スティーブン・モヤの登場だ。3連戦で13打数9安打4打点の神がかり的な大活躍。市民権取得のために渡米したダヤン・ビシエドの代わりの緊急昇格だったが、チームのピンチを見事に救った。スポーツ新聞各紙は「またモヤ決勝打」「闘志をモヤした」と書きたい放題だったが、もっとも多かった「モヤさま」というフレーズにはさまぁ~ずの三村マサカズもツイッターで反応した。

 オープン戦ではさっぱりだったが、2軍で努力を重ねて日本野球に順応してみせた。生まれて初めて一塁の守備練習に取り組み、朝9時からの特打も黙々とこなした。「向上心がとにかく高くて、こんなに真面目な外国人は見たことないよ」と渡邉博幸内野守備走塁コーチは言う。スイングはコンパクトになり、ヒットを量産できるようになった。モヤ自身、「『モヤは大きいからホームラン』と言われてもね。小さなことでも積み重ねれば大きなことになる」と胸を張る。

 身長201センチの巨体なのに、なんだか可愛らしいのもモヤの特徴だ。「ドミニカに来て、僕を探してくれて、日本まで連れてきてくれた」とメルヘンチックな言い回しで森繁和監督を「お父さん」と慕うモヤ。生まれて初めて一塁を命じられると手で顔を覆って「ノ~」と嘆いたモヤ。それでいて「完璧じゃないが、ドラゴンのような守備を披露したい」と謎の抱負を語ったモヤ。家族と仲良く帰る兄貴分のソイロ・アルモンテを横目に、ひとりで自炊生活を送る単身赴任中のモヤ。背が高すぎてあちこちで頭をぶつけるモヤ。

 モヤはムードメイカーでもある。勝てばチームメイトと肩を組んで笑顔を弾けさせ、決勝打を放てば雄叫びを上げる。開幕3連勝を飾ったオネルキ・ガルシアも「モヤが来て、チームが180度変わった」と証言する。20日の広島戦、終盤に逆転されてシュンとしかかったところへ、反撃開始の2塁打を打ったのはモヤだった。「試合はまだ終わってない。27アウトを取られるまでまだ時間がある」。こう言い切れる男は強い。26歳の若き大巨人は恐れ知らずだ。

「逆転(負け)のドラゴンズ」

 だが、いつかはモヤも打てなくなるときが必ずやってくる。そのとき、ドラゴンズを支えなければいけない男は誰なのか?

 ドラゴンズは24日、長野市で巨人を相手に試合を行う。長野で巨人戦といえば、昨年9月5日に長野県松本市で行われた試合を思い出す。開幕5連敗、最下位ヤクルト相手に10点差逆転負けなど、惨劇続きだった2017年のドラゴンズだが、この試合も忘れがたい惨劇だった。

 7回に逆転して3点をリードしたドラゴンズは必勝の逃げ切り態勢に入る。8回は又吉克樹が巨人の陽、マギー、坂本を三者三振。これで勝てるとドラゴンズファンは誰もが思った。しかし、9回に登板した守護神・田島慎二が9回2アウトから3点差を追いつかれてしまう。宇佐見のホームラン、ありゃ何だったんだ? 田島も雨に濡れた髪をかきむしるしかなかった。昨季の田島の巨人戦の防御率は9.58である(通算防御率は2.87)。

 結局、延長11回、福谷浩司が寺内にサヨナラ3ランを浴びて負けてしまった。寺内の2017年の本塁打はこれ1本のみ。終盤にリードを守りきれず、打たれなくてもいい相手に打たれる。弱いドラゴンズを象徴するような試合だった。

 今のプロ野球は序盤から中盤に奪ったリードを、7回、8回、9回といかに守り抜くかが勝敗を大きく左右する。誰もが知っているセオリーだ。広島には今村、ジャクソン、中崎がいる。DeNAは井納を7回に回してパットン、山崎康とつなぐリレーを作った。巨人は上原を獲得して、澤村、マシソン、カミネロとつないでいる。勝ちパターンが盤石になったチームが混セを抜け出すことになるだろう。

 そしてドラゴンズはここが弱い。2017年のドラゴンズは79敗中、実に39敗が逆転負け。ヤクルトよりもロッテよりも多かった。まさに「逆転(負け)のドラゴンズ」だ。逆転勝ちの多い広島と逆転負けの多いドラゴンズが試合をすれば、そりゃ分が悪いに決まってる。4月20日の試合は途中までまさにそんな感じだった。それを跳ね返したのだからドラゴンズファンは歓喜したわけだ。