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清宮幸太郎の「プロ1号、2号」 鎌ヶ谷のファンが騒がなかった理由

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/04/27
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【えのきどいちろうからの推薦文】
日本ハムは文春野球史上初めて代打を送ります。近澤浩和さんは「文化放送スポーツ番組のサードコーチ」ともいえる、優秀な放送作家です。手をぐるぐる回します。活字の仕事はほとんどやってないから、こうしてコラムが読めるのは僕にとっても貴重です。先日、清宮幸太郎が鎌スタで放った「プロ1号、2号」を現地の目線でリポートしてくれました。

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鎌ヶ谷で見た清宮のプロ初ホームラン

 4月20日、イースタンリーグの日本ハム対ロッテ。今シーズン、ファイターズタウン鎌ヶ谷スタジアムでの初観戦だった。3回裏、お目当ての清宮幸太郎が二度目の打席を迎えた。一死一、二塁。得点は1対3、一発出れば逆転の場面。マウンドにはマリーンズの先発、元守護神の西野勇士がいた。清宮は初回、ライト前にクリーンヒットを放っていたせいかとても落ち着いているように見えた。ボール、ストライク、ファウルのあとの4球目。低めの球をすくった清宮の打球は高々と上がって右中間の芝生席に落ちた。逆転の3ラン、プロ初ホームラン!

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「俺、生で見ちゃったよ! 清宮のプロ初ホームラン」

 誰かと喜びあいたかったが、連れはいないし、いたとしても一緒に目撃しているので自慢にならない。ファイターズファン仲間のグループLINEに清宮ホームインの画像と初ホームランの情報を送った。「ラッキーですねぇ! 一生語れますよ」「すごい、すごい、生で見れて羨ましい」と返信が来た。

20日のイースタン・ロッテ戦で3ランを放った清宮幸太郎

 3日前に仙台で初ヒットが出ていたからそろそろと思って平日の鎌ヶ谷に足を運んだ甲斐があった。それだけじゃない。ロッテの七番にはドラフト1位の安田尚憲がいて二塁打2本。4回から日本ハムのドラフト7位、東大出身の宮台康平が2イニング投げて……と注目のルーキーが競演。ネット裏最上段の屋根付きシート、ファンクラブ価格1200円はお値打ちだなあとビールを飲んでいい気分になっていた。

 すると7回裏、一死一、三塁で迎えた第4打席の清宮。西野の初球をパッカーン! 青空に溶けていきそうな打球だった。ライト肘井は見上げるだけ。特大3ランがライトスタンド後方の防護ネットに当たって落ちた。またまた仲間にLINEを送る。「清宮、もう一軍に上げちゃいましょう」などと盛り上がる。

 プロ入り前から「王さんの868号を目標に」と話していた清宮だ。早速、「KIYO METER」を始めよう。高校時代「111」までいったカウンターをリセットして「001」「002」、あ、まだこれは二軍戦か。いや、目標でっかいんだから二軍戦カウントしてもいいんじゃない?

 僕はすっかり興奮しているのだが、鎌ヶ谷のスタンドはやけに静かだ。いや、静かではないのだけど、浅間大基のタイムリーや2番手・宮台康平のピッチングに比べて、清宮のホームラン2発が特別お祭り騒ぎという雰囲気ではない。皆さん冷静すぎないですか? これ、間違いなく明日のスポーツ新聞の一面ですよ、エンゼルスの大谷翔平をおしのけて。

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