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世代を超えて応援し合える社会へ

遺贈・寄付特集

寄付や遺贈が進むことで、社会はどんな風に変わっていくのだろうか。全国レガシーギフト協会副理事長の鵜尾雅隆さんに聞いた。

 「東日本大震災を契機に、日本の寄付文化は変わりつつあります。大震災を経験したことで、人々の中にあった“誰かを助けたい”という思いと、行為としての寄付が結びついているように見えます」と鵜尾さんは話す。

全国レガシーギフト協会 副理事長
鵜尾雅隆氏(うお・まさたか)
JICA、外務省、米国NPOなどを経て日本ファンドレイジング協会を創設、2012年から代表理事。認定ファンドレイザー資格の創設などに尽力している。
全国レガシーギフト協会 副理事長
鵜尾雅隆氏(うお・まさたか)
JICA、外務省、米国NPOなどを経て日本ファンドレイジング協会を創設、2012年から代表理事。認定ファンドレイザー資格の創設などに尽力している。

 内閣府の世論調査報告書によると、社会貢献したいと考えている人は7割近くに上っている。寄付が根ざす土壌ができたところに、制度面でも追い風が吹いた。2011年の税制改正で、公益法人や認定NPO法人、学校法人などへの寄付に対する所得税の控除が大きく引き上げられた。

 中でもシニアの寄付意識の高さは鮮明。『寄付白書2017』によると、寄付者率は40歳代までは3割前後なのに対して、70歳代は約6割に上る。5人のうち3人は何らかの寄付をしている。

人生の集大成として次世代へエールを贈る

 そうした状況で注目を集めているのが「遺贈」である。相続が発生した際に遺された財産を贈る相手を指定する行為で、欧米では「レガシーギフト(遺産の贈り物)」とも呼ばれる。「一人ひとりが築いた遺産を、次世代へ贈り物として継承していく──。欧州では遺贈を誇らしい行為と捉えます」

 遺贈をひもとけば、人それぞれに異なるストーリーがある。難病と闘ってきた人が新しい治療法の開発のための資金を贈ったり、若いころ奨学金をもらった恩返しに子どもの修学支援を支える。贈り先は思いの数だけ異なる。

「遺贈とは、その方の人生の集大成です。まずはどのような人生を歩んできたのか、物語を描くことをおすすめします。そこに支援したい活動のヒントがあるはず。また、遺贈は相続とも絡むため、寄付よりも手続きは複雑です。財産の遺し方や遺言書の用意などで悩んだときは、第三者機関である『いぞう寄付の窓口』を活用してください」

 この先、子どものいない高齢世帯が増えていくと予想される。そうした時代に遺贈は「思いを生かす受け皿」として活用が進んでいくだろう。シニアから次世代へとエールが贈られ、それを受けた若い世代がより良い社会をつくっていく。そんな社会を鵜尾さんは目指す。

「遺贈や寄付が進んだ先にあるのは、世代を超えてお年寄りと若者が応援し合える社会。それは、一人ひとりにとっての人生の充足にもつながっていくはずです」