昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載クローズアップ

「東京ミッドタウン日比谷」に入った世界最高のバー

岸久――クローズアップ

2018/03/30
岸久氏

 3月29日、東京・日比谷に新しい商業施設「東京ミッドタウン日比谷」がグランドオープンした。波打つような外観、最新式の映画館や空中庭園、ゆったり本と親しんだり、様々な食を楽しんだり、大人が寛げる街・日比谷を象徴する一角になりそうだ。

 この施設に、『World's Best Bars』でヴェネツィアのハリーズ・バーと並んで掲載されるオーセンティックバー「スタア・バー」が出店し、注目を集めている。

「2000年から銀座1丁目の地下1階で『スタア・バー』を始めました。商業施設に入るのも初めてなら、地上のお店も今回が初めてで(笑)。昔から憧れの建物だった三信ビルの跡地に建つことも、何かのご縁かと思いました」

 日本人初の世界カクテルコンクールの優勝者であり、日本バーテンダー協会会長も務める岸さんが作ったお店は、幅22メートルの横長の店内にカウンター20席のみ、という究極のシンプル。

「電車1両分のサイズです。従来の店はカウンター内が狭くて、スタッフ同士がすれ違うのも一苦労でしたが、ここでは楽に行き違える幅があるのが嬉しい。また、カクテル作りの装備を使えたり、スタア・バーが開店以来、大事にしている氷も十分に備蓄できます。戦争に例えるのは何ですが、お客様が波状攻撃のように来店される時間帯は、カウンターの中は戦場と化します。氷が足りない、おしぼりが足りない、というのが一番怖い。その点、日比谷では“装填”に手ぬかりなく、皆様をお迎えできます」

 スタア・バーが世界的に有名になり、NHKの『プロフェッショナル 仕事の流儀』にも取り上げられて、忙しくなり過ぎた後、ここ2、3年は愛犬の介護をしつつ、自らの来し方行く末を考える時間を持ったという岸さん。

「考え詰めていくと、自分の希望はお店を増やしたいことでもないし、もう俺はバーテンダーはしなくてもいいんじゃないかと思ったり……でも、犬猫と過ごすマンションから東京ミッドタウン日比谷の建設現場が見えるんです。一層ずつビルが建ち上がっていくのを毎日見ているうち、愛着が湧いてきました……」

日比谷の「スタア・バー」店内。
シンプルでゆったりとした空間に似合うよう、グラスなどもやや大ぶりなものを揃えている。

 日比谷のスタア・バーでのみ飲める岸さんの新しいカクテルも誕生。その名も“パーク・ライフ”。日比谷公園を見下ろすロケーションにぴったりの、ウォッカベースのひすい色の爽やかな1杯である。

「いままでの店がいいというお客さんもおられるので、銀座と日比谷の2つの店を行ったり来たりしますが、映画の後、お仕事の後、お気軽にお立ち寄り下さい」

きしひさし/1965年東京都生まれ。96年、IBA「世界カクテルコンクール」で日本人初の世界チャンピオンに。2000年、銀座1丁目に「スタア・バー」を開く。08年「現代の名工」に選出。14年、黄綬褒章受章。著書に『スタア・バーへ、ようこそ』『スタア・バーのカクテルブック』など。

INFORMATION

スタア・バー 日比谷
TEL:03-6206-1560
https://www.starbar.jp/star-bar/

スタア・バーのカクテルブック (文春新書)

岸 久(著)

文藝春秋
2015年8月20日 発売

購入する

取材・文:樋渡優子