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連載近田春夫の考えるヒット

欅坂46の戦略はオタクとヤンキーの共存か?――近田春夫の考えるヒット

2018/04/04

『ガラスを割れ!』(欅坂46)/『ジャーバージャ』(AKB48)

絵=安斎肇

 いわゆる末席を汚すという形ではありますが、このわたくし一応音楽商売で飯を食(は)んでおります。関係上、俗にいうところの“大所帯女性アイドル産業”が、ここからどのような推移を見せて行くのかについて、んなこたァ俺にゃ全くどーでもいい、関係ねーなどと調子づいていったりしたら「いくらなんでもあーた、そりゃぁ偉そうが少し過ぎるのでは?」etc.……へたすりゃあ糾弾もされかねぬ。

 なので、忖度もとい勉強の意味も兼ねて、今週の取り組みは、AKBになんとか坂、ということと相成りましたが、あ! 欅って漢字は、けやきって読むんだったのよね。頼む! 秋元、次から難しい字にはルビ振ってくれぇ(笑)。

 そんなこんなで、48及び46の新作を遠く眺めているばかりの私ではあったが、ふたつ曲を聴き比べ、強く感じたことがあった。ざっくばらんに申せば、プロデュースサイド的には益々“二項対立”に煽りを入れているなァと。

 そうしてあらためて気づいたのが、主たるCD購買層と目される“オタク”と一括りに扱われがちの坊やちゃん達だが、ああ見えて実は美学は決して一枚岩ではないのやもしれぬ、ということである。

ガラスを割れ!/欅坂46(SONY)作詞は秋元康。平手友梨奈は発足以降6作連続でセンターを務め、グループイメージを牽引。

 さて『ガラスを割れ!』だ。初め、例の“ガラスの天井”から来ているかと思っていた。だが、歌詞を眺め、特典映像の振り付けなどを見るにつけ、出典はそこではないのかも? そんな気になっていった。いや、勿論現状を前向きに打破せよの主張もこめられているのに間違いないのだが、何かもう少し鬱屈した、やり場のない怒りのようなものを、ガラスを叩き割ることで鎮める、収める。いってみればこれは破壊によるカタルシスがテーマと取れなくもない作りだ。

 ん? てーことはこの“ガラス割りの巻”ひょっとして尾崎豊の哲学の伝承なのでは、と思ってしまったのである。

 ま、しかし落ち着いて考えてみれば、たといおもてっつら如何に穏やかな人となりに終始のオタクとて、心のなかは憎悪のマグマ煮えたぎっているようなのもいないとは限らぬ。案外そっち派の方が割合は多かったりして!(笑)

 ところで(そういや)尾崎豊って、オタクとヤンキー双方が歩み寄り、最終的に分かち合えるっつうか、共感出来ちゃうっつうか、そんな立ち位置/存在に――人生の結果的にですけどね――収まっちゃったってとこないすか?

 見えてきたのは戦略である。そうか、思えばこの曲に限らず欅坂46のシングルは、必ず、不良たちにも騙し騙しではあるが、門戸を開いてきていたのである。それが一方では、メインとなる層の心の闇の解放にもつながっているとすれば……。すんませんが結論を急ぎますね。オタクとヤンキーの平和に共存出来るマーケットこそが、アイドルたちの安定的未来を約束するものだと、秋元康は考えてるんじゃねぇのかなぁ?

ジャーバージャ/AKB48(KING Records)作詞は秋元康。センターはこれが初となる岡田奈々。ジャーバージャに意味はないというが……。

 AKB48。

 知りたいのはやっぱこのタイトルの作者的本意よね!

今週の告知「滝口悠生氏の“ジミ・ヘンドリクス・エクスペリエンス”が新潮文庫に入るっていうので、文庫解説を書いたよ。原付バイクでの旅から始まって、そこに様々な思い出がインサートされる趣向の小説だけど、さすが芥川賞作家。文章うまいよ」と近田春夫氏。「で、その解説も我ながらもっともらしく書けたんで、ぜひ立ち読みしていただけたら!」