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連載文春図書館 今週の必読

本上 まなみ
2016/11/01

虫を追っていたころの記憶がよみがえります

『わくわく昆虫記 憧れの虫たち』 (丸山宗利 著/山口進 写真)

source : 週刊文春 2016年10月27日号

genre : エンタメ, 読書

 虫、好きですか? 今もトンボを捕まえられますか? クツワムシの絵、描けますか? 昆虫学者が《悲鳴をあげるほど驚いた》幼虫って何でしょう?

 昆虫大好きの人にはもちろん、ちょっと苦手という人にもおすすめの一冊です。ふだん私たちの身近に暮らしている“普通種”の虫たち……ダンゴムシ、テントウムシ、アブラゼミなどのお馴染み系が多数登場。その生態、意外な活躍ぶりが紹介されていきます。

 著者は『昆虫はすごい』(光文社新書)や、私の愛読書『ツノゼミ ありえない虫』(幻冬舎)などをしるした昆虫学者・丸山宗利さん。ジャポニカ学習帳の表紙などでも活躍されている昆虫植物写真家、山口進さんとの見事なコラボです。

《昭和の真っただなかで少年時代を過ごした》という著者の子ども時代のエピソードもたっぷり。アリの巣に蜂蜜を流し込み、アメンボを虫で餌付けし……。

 ああ、私もいろいろやりました。私はアリジゴクの穴を見つけるとアリをつまんで入れてみなくては気が済まない子どもでした。落としたアリはしばらくうろうろするのですが結局無事にはい出して来て、一度もアリジゴクが現れる恐怖の瞬間を見ることはできなかったっけ。ちょっぴりホッとしつつ、あー今日も留守か、なんてつぶやいていた記憶があります。トンボやバッタも、親しむあまり羽や足がもげるような事態も多々。今頃ですが、ずいぶん乱暴を働いていたなあ。

《本書をめくっていけば、きっとその時の気持ちを思い出すと思う》と前書きにある通りの本。今回ほぼすべて撮り下ろしという偉業をなした山口さんの写真は、土の香り、草いきれを感じながら地面に腹這(はらば)いになって虫を見ていたころの記憶を呼び覚ましてくれます。

 著者は、今でも大きな芋虫と毛虫は苦手という意外な一面も告白。故に、虫の苦手な人の気持ちもわかる、とも語っておられる。昆虫学者もキライな虫あるんですね(ちょっとうれしい)。

まるやまむねとし/1974年東京都生まれ。九州大学総合研究博物館助教。近著に『だから昆虫は面白い』など

やまぐちすすむ/1948年三重県生まれ。写真家。著書に『カブトムシ 山に帰る』などがある。

ほんじょうまなみ/1975年生まれ。大阪育ち、京都在住の女優。著書に『落としぶたと鍋つかみ』『芽つきのどんぐり』などがある。

わくわく昆虫記 憧れの虫たち

丸山 宗利(著)

講談社
2016年8月26日 発売

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