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「阿川佐和子さん×磯田道史さん×中川武さん」明治維新150年記念 Special Talk

明治を知り、明日を知る。

明治維新から150年。愛知県犬山市の明治村では様々な記念企画が目白押し。その皮切りとして、村長・阿川佐和子さんと磯田道史さんのトークイベントが開催された。

 3月17日、トークイベントの会場になったのは、村内の芝居小屋・呉服座。明治25年、大阪府池田市に建てられたもので、江戸時代からの伝統建築の名残を留める建物として重要文化財に指定されている。当日、呉服座はトークイベントのお客さんで満杯。そこへ花道から登場したのは、ゲストの歴史学者・磯田道史さん、村長・阿川佐和子さん、そして早稲田大学名誉教授で明治村館長の中川武さんのお三方だ。

中川 今日お二人に座っていただいている椅子、実は鹿鳴館で使われていたものなんです。

阿川 そうそう。磯田さんをお迎えするので、今日は特別に(笑)。

「明治」という時代をめぐっての鼎談は大いに盛り上がった
「明治」という時代をめぐっての鼎談は大いに盛り上がった

磯田 えっ。(立ち上がって椅子を見ながら)猫足で、漆に蒔絵が施されているんですね。大名道具とヨーロッパの王室のものが合体している。明治という時代を象徴していますね、これは。

阿川 今年は明治維新から150年という節目の年。明治というのは、西洋の文化がドカーン!と入ってきた画期的な時代ですよね。さぞかし、みんなオタオタしただろうなって思うんです。

磯田 そうでしょうね。福沢諭吉も「一身にして二生を経る」と書いています。ひとつの身体でふたつの世界を生きる。大変だろうなと思うけれど、それだけに期待と希望もあったんでしょう。

中川 明治の近代化で注目したいのは、社会の隅々まで近代化していく、そのスピードですね。全国津々浦々急速に近代化が進んでいく。その背景には、江戸時代に高い技術や知識が一般庶民にまで広がっていたということがあると思います。それが明治に入って一気に開放され、近代化の原動力になったんじゃないか、と。

磯田 明治鶏が生んだ卵は、江戸の産物なんですよね。江戸の終り頃、日本は世界で最も中央集権的な国家でした。日本の人口が3000万だった時代、江戸には町人だけで100万人、武士も入れると130万人もいた。これは世界一の人口集中なんです。文字が読める、書けるという識字率もおそらく40パーセントはあったでしょう。1850年代の東アジアでは、図抜けて1位です。識字率4割を超えた社会というのは、実は近代化の浮上点、飛行機もある一定の速度を超えると飛び上がりますが、そういう状態だったんです。

会場となった呉服座の外観。重要文化財だ。
会場となった呉服座の外観。重要文化財だ。