文春オンライン

皮肉にも閣僚解任で「大統領らしさ」を身につけたトランプ大統領

「大人たち」のクビを切り、政策実現のためのスタッフ集めに動くが……

2018/04/05

ロシアゲート疑惑を捜査するモラー特別捜査官は解任されるか

 第三のパターンは、ロシアゲート疑惑に関してトランプに不利になると見られたケースである。

 史上最速(25日間)で安保担当補佐官の職を解かれたフリンは公的には「ペンス副大統領に嘘の報告をしたこと」が理由として挙げられているが、彼が大統領選挙中にロシアとの窓口となり、トランプの大統領就任後にロシア制裁を解除することを約束したと言われており、フリンをホワイトハウスに留めておくことはリスクが高まると判断したのであろう。フリンの側近で安保担当副補佐官だったK.T.マクファーランドをシンガポール大使として指名してホワイトハウスから引き離したのも同様だ。

 またロシアゲートの捜査に協力していると見られていたホワイトハウス広報部長のヒックスもこの中に入るかもしれない(彼女は第一のパターンで辞任した秘書室長のポーターと恋愛関係にあり、家庭内暴力の裁判でポーターを擁護したことが問題とされた)。

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史上最速(25日間)で安保担当補佐官の職を解かれたフリン(米国防総省サイトより)

 イェイツ司法長官代行、コミーFBI長官、シャウブ政府倫理局長(自ら辞任)、マケイブFBI副長官(退職の2日前に解任し、年金を満額受け取れないようにした)、ブランド司法長官補(自ら辞任)など、ロシアゲートの捜査に関連する責任者もかなりの数が更迭・辞任している。イェイツ司法長官代行は移民入国禁止の大統領令に反発し、「こんな大統領令を守るのは司法省の仕事ではない」と言って辞任した。

 これは明らかにロシアゲート疑惑の捜査を妨害する目的があるものと思われるが、現在特別検察官のモラーがそうした背景を含めて捜査中である。このモラーを特別検察官から解任するかどうかにも、現在注目が集まっている。

 かつてニクソンはウォーターゲート事件を捜査するコックス特別検察官とリチャードソン司法長官らを解任し、「土曜日の夜の虐殺(Saturday Night Massacre)」と呼ばれる事件を起こし、それが引き金となって弾劾プロセスが進むこととなった。もしトランプがモラーを解任するようなことがあれば、「土曜日の夜の虐殺」の再現となり、弾劾やむなしという流れが出来る可能性がある。

トランプに嫌気がさして辞めていく人たちも

 第四のパターンが、トランプとの確執による更迭である。

 マクマスターはトランプが主張する北朝鮮への攻撃やイラン核合意の破棄に関して、それを押しとどめる役割を担っていたが、北朝鮮との緊張が高まる中で更迭された。同様にティラーソンも北朝鮮とは外交による問題解決を優先し、トランプ大統領の求める政策に抵抗したことが原因と考えられている。ティラーソンは辞任のあいさつで「ワシントンは意地の悪い街かもしれないが、好き好んでその一員になる必要はない」と暗に国務省職員に政権から離れることを促した。

 また経済担当補佐官のコーンは、関税引き上げや保護貿易的な政策に反対したことが更迭理由とされている。

更迭されたマクマスター元大統領補佐官(写真左から3人目、米国防総省サイトより)

 トランプ政権に嫌気がさして辞めていく人たちもこのパターンに入るだろう。

 政権発足当初は強面な姿勢で目立っていたスパイサー報道官や、中東政策の専門家でマクマスターの右腕として働いていたパウエル安全保障担当副補佐官、トランプ大統領出演のリアリティショーの共演者であるオマロサ大統領コミュニケーション担当官などは、トランプ政権にいるよりも別の道を探す方が彼らの将来にとって有益であると判断した結果辞任を選んだとも言える(スパイサーやはオマロサは、その後トランプ政権時代のネタでテレビ出演し、パウエルは古巣のゴールドマンサックスに返り咲いた)。

 彼らは更迭されたわけではないが、トランプ政権の政策や体質に合わず、対立するよりも辞任することを選んだ人たちだと言える。