昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

岩田 温
2018/04/11

なぜ日本で「歴史の真実」を探るためには、アメリカの公文書に頼るしかないのか

旬選ジャーナル 目利きが選ぶ一押しニュース

▼〈司馬遼太郎賞の奥山編集委員 受賞スピーチ〉3月1日、朝日新聞社ホームページ

 読書の愉しみの一つは、自分が漠然と知っていると思っていた出来事が、異なった視点から眺めてみると全く別の顔を持っていたことを思い知るところにある。視点が斬新なだけで全く資料の裏付けのない陰謀論の類は論外だが、緻密な資料に裏打ちされた史実はまことに興味深い。

 奥山俊宏氏の『秘密解除 ロッキード事件』(岩波書店)は、アメリカで公開された公文書に基づいてロッキード事件を見直した著作で、発売直後に購入し、その面白さから一気に通読した。

 日本では人気の高い田中角栄のことをキッシンジャーが心の底から軽蔑し、「信じられないウソつき」呼ばわりしていたことに驚いた。勿論、奥山氏が創作した言葉ではなく、アメリカの公文書に残っている表現だ。

ロッキード事件の初公判で入廷する田中角栄 ©文藝春秋

 丁寧に資料を読み解き、一つ一つの資料から事件の全体像を描き上げていく奥山氏の姿勢、筆力には圧倒された。

 この度、本書が第21回司馬遼太郎賞を受賞し、受賞者である奥山氏のスピーチが朝日新聞社ホームページで公開されていた。自分が興味深く読んだ本が社会的に評価されたことが非常に嬉しく、受賞記念のスピーチを読んだ。そして看過できない新たな事実を突きつけられた。

 奥山氏がアメリカの公文書を駆使してロッキード事件を追ったのは、日米の公文書の保存に関する圧倒的な格差があったからだったという。日本の公文書の扱いが記録の仕方、保存も含めて、アメリカに遠く及ばないが故に、歴史の真実を探ろうとすれば、どうしてもアメリカの公文書に頼らざるを得ないというのだ。

この記事の画像