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マスクは意味なし! 風邪予防に一番効果的なのは……?

医療の常識を疑え #3――風邪予防の新常識

2018/05/02

 日頃から健康に気をつけて、「体にいい」とされる生活習慣や食事に気をつけている人が多いのではないだろうか。

 だが、医学や健康の常識は、どんどん変わっている。昨日まで正しいと思われていたことが、いつの間にか誤りとなっていることも少なくない。古い知識のままで、間違った習慣を続けていると、かえって健康を損なわないとも限らない。

 そこで、最新の研究成果や知見に基づき、医学と健康の新常識を98項目集めてみた。3回目は「風邪の新常識」。梅雨に入ってエアコンを使いだすと、体調を崩す人もいるだろう。古い常識で対処すると、かえって長引かせるかもしれないので、要注意だ。

もっとも効果的なのはシンプルな「あのこと」

 まずは、とくに日本人が風邪予防のために好んで使う「マスク」から。感染症コンサルタントの岸田直樹医師が話す。

「医療従事者を対象に日本で行われた研究によると、マスクをしてもしなくても、風邪をひく割合に差はありませんでした。他人にうつさないためのエチケットとしては必要ですが、マスクによって自分がうつらないようにする効果は、あまり期待できません

 むしろ、風邪の感染予防には、手洗いがもっとも効果的とされている。汚れた手で、口や目を触らないことも重要だ。爪や手指の間、親指などに汚れが残りやすいので、意識して流水やせっけんで手を洗ってほしい。物を触った後や食事の前にアルコールで手指を消毒するのも効果的だ。

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 ただし、感染性胃腸炎の原因となるノロウイルスには、アルコール消毒は効かない。患者が吐いたものなどを処理した際には、やはり流水やせっけんで十分に手洗いをして、顔や口に手を持っていかないように気をつけてほしい。

 また、ノロウイルス検査は、インフルエンザ検査と同様に不正確で、「陰性」と出ても感染していることがある。検査で陰性だったからと安心して学校や会社に行くと感染を広げてしまう恐れがあるので、嘔吐や下痢をしている人が身近にいた場合にはまずノロウイルスを疑って、その前提で感染予防策をとることが重要だ。

うがいは“水”が一番効果的

 手洗いだけでなく、風邪予防にはうがいも効果的だが、よく使われているヨード系のうがい薬は、かえってよくないとされている。野口内科院長の野口仁医師が解説する。

「風邪の発症率を比べた研究によると、水うがいが最も効果が高く、ヨード系のうがい薬を使った人たちの発症率は、うがいをしない人たちと差がありませんでした。ヨードはのどに棲みついている常在菌まで殺してしまい、粘膜の細胞も傷つけるため、かえって感染しやすくなると考えられます。うがいをするなら、水で十分です。また、お茶によるうがいも効果的だと報告されています

 

「風邪かな?」と思ったら、こじらせる前にと病院へ行く人も多いかもしれない。しかし、抗生物質を処方されても、風邪には効果はない。風邪はウイルス感染症であり、細菌を殺す薬である抗生物質にはウイルスは殺せないからだ。

 また、病院やドラッグストアで手に入る風邪薬(総合感冒薬)を早めに飲んだとしても、風邪を予防する効果はない。総合感冒薬は、のどの痛み、鼻水、咳などの症状を和らげるためのもので、風邪を根本的に治す薬ではないからだ。風邪薬や解熱剤を使うと、むしろ治りを遅くしてしまう可能性もある。岸田医師が言う。

「風邪で咳や鼻水が出るのは、ウイルスを排出するためです。また、体が熱を出すのは、ウイルスが熱に弱いことを利用して、殺しやすくするためです。つまり、風邪の諸症状はウイルスに対する体の防御反応なので、薬でそれらの症状を止めてしまうと、体が自然に治そうとする力を弱めてしまうことになるのです。症状が我慢できなければ飲んでもかまいませんが、我慢できる程度の症状であれば、風邪薬や解熱剤は無理に飲み続ける必要はありません

(初出『週刊文春』2017年1月5・12日号)