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三田 茂
2018/04/16

能力減退症に見られる症状

監修:三田茂

 典型的な例ですが、子どもですと、宿題をきつく感じるようになります。勉強がわからないからというより、宿題をするエネルギーがないのです。昼間は学校でなんとか頑張りますが、帰宅したらもう体力が残っていません。ほんの少しの宿題を目の前にして、2時間も3時間もかかってしまい、もう一歩も進めないというような状態になってしまいます。

 本当は、宿題なんかパパッと終えて、早く遊びたいのです。でもそれができない。

 また、より深刻なのが、物覚えが悪くなり、先生の言うことを理解して行動できなくなることです。学校で、「あれをやりなさい」「これをやっちゃ駄目です」「その次はこれ」と言われると、ひとつの指示から次の指示までをうまくつなげて行動することができません。

 このような事例から、発達障害を疑う人もいますが、違います。発達障害は、生来から見られる特徴がありますが、能力減退症で困っている子どもたちは、半年前、1年前は先生の言うことを順序だてて従うことができていたからです。

 僕は子どもたちに「能力減退症」が見られることは、たいへん深刻と思います。子どもというのは、大人に向かって枝を伸ばすように発達していきます。それが、停滞したままだと、将来大きな木に育つのか。心配です。

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本を読むのがめんどくさい

 大人のケースでは、活字を読んだり、熟考することをひどくめんどくさく思うようになります。体力も落ちて、いくら休んでも疲労感が抜けきらないのです。これでは仕事になりません。ある大手企業の30代の男性は、第一線でバリバリ働いていたのですが、体調がすぐれないことがだんだん多くなり、会社を1週間も休んだといいます。それでもすっきりと回復できず、病院を転々としていました。

 記憶力や判断力が急激に落ちることは、働く世代にとって致命的で「若年性アルツハイマー」などの認知症がよぎるでしょう。たしかに、物忘れや、物事をすぐに理解できなくなることなど、重なるところがあります。

 しかし、「能力減退症」はアルツハイマー型や脳血管性の認知症と関係ありません。患者に認知症を診断するテストをしてみても、悪い結果は今のところ出ていません。認知症のテストは、隠れている認知症を拾い出すように作られていますから、そこには引っかからないタイプの能力の低下ということです。

 脳というのは、物事を覚えたり、思い出したり、考えたり、判断したりと多くの高次機能をつかさどっています。目を覚ませば、家族に「おはよう」と言い、どこそこに行こうと予定を立てたり、時間を見計らったり、イスにぶつかりそうになったらよけたりと、体は生き生きと反応しています。

 ですが、能力減退症の患者さんは、目を覚ましている状態でも、寝ているかのように全体的に意識がボヤーンとしています。