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連載THIS WEEK

木村 正人
2016/07/10

首相候補に急浮上
靴フェチの女傑は英国の救世主か?

source : 週刊文春 2016年7月14日号

genre : ニュース, 国際

「イギリスのメルケル」との声も
Photo:Kyodo

 先週本欄で紹介した英国首相レースの本命、ボリス・ジョンソン前ロンドン市長が同じEU離脱派のマイケル・ゴーブ司法相に裏切られ、保守党党首選への出馬を土壇場で断念した。記者会見の生中継を見ていた英国中がひっくり返った。「政界の一寸先は闇」と言うものの、保守党の政争は陰謀と裏切り、シェークスピアの悲劇を見ているようで怖い。

 ボリスは離脱派が勝利を収めると一転、トーンダウンした。これが欧州懐疑の確信犯ゴーブに疑念を抱かせる。党内多数派工作のため100しかないポストを300人に空約束し、ゴーブに約束した財務相ポストまで他に提示していたことがバレ、政略的な2人の同盟関係は終止符を打った。

 英国政治では背中から政敵を刺した者は首相になれない。キャメロン、ボリスと立て続けに背中から刺したゴーブが首相になる目はないだろう。そこで首相候補に急浮上したのが二番手のテリーザ・メイ内相だ。エリザベス一世やサッチャー元首相のように、英国の国難には女性の救世主が現れる。

 今年還暦と思えないほど、スラリとしたスタイルは妖しい魅力を放つ。日本でも「オシャレ番長」と騒がれ始めたが、メイと言えば「靴」。保守党初の女性党幹事長として「わが党は陰険な政党と見られている」と警句を発した際、ヒョウ柄をプリントしたハイヒールで登場。膝上まであるブーツ、シマウマ模様や宝石をちりばめたハイヒール。皆、メイがどんな靴を履いてくるか、楽しみにしている。

 英国国教会司祭の父に影響され、12歳で政治家を志す。オックスフォード大学では地理学を学んだ。英中銀・イングランド銀行で6年間働いた。暗殺されたパキスタンのブット元首相の紹介で大学時代に知り合ったバンカーの夫と結婚。子供はいない。

 内相としては、移民の流入数を10万人までに抑える政府目標を達成できず、イスラム過激派の米国引き渡しや国外退去で欧州人権裁判所と対立した。しかし、危機管理には定評がある。「政界の道化師」ボリスとは正反対の人柄だ。国民投票の再実施、総選挙の前倒しはキッパリ否定。分断した保守党と英国を融和させ、EU離脱という難事業が待ち受ける。

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