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鳥集 徹
2018/05/16

転倒、認知症……高齢者の血圧を下げ過ぎるとリスクが高まるという事実

医療の常識を疑え #6――血圧の新常識

 医学や健康の常識は、どんどん変わっている。昨日まで正しいと思われていたことが、いつの間にか誤りとなっていることも少なくない。古い知識のままで、間違った習慣を続けていると、かえって健康を損なわないとも限らない。

 そこで、最新の研究成果や知見に基づき、医学と健康の新常識を98項目集めてみた。6回目は「血圧の新常識」。血圧が「高いとよくない」ことは皆知っているだろう。しかし、低すぎるのもまたよくないのだ。どんな場合に気をつけるべきなのか、専門家に聞いてみた。

「高血圧論争」の答えは……?

 現在、日本高血圧学会が定めるガイドラインでは、上(収縮期血圧)が140mmHg以上だと高血圧と診断されることになっている。これに対して、4年ほど前に日本人間ドック学会が血圧の基準範囲を「147まで」と公表し、これに反発した日本高血圧学会との間で「高血圧論争」を巻き起こしたことがあった。

 しかし、世界的に見ると、血圧の基準はもっと緩やかになる可能性がある。というのも、昨年1月17日、米国内科学会と米国家庭医学会が合同で、60歳以上の降圧目標を「150未満」とする新しいガイドラインを公表したからだ(心血管病などのリスクがある人を除く)。

 

 つまり、ふつうに健康な60歳以上の人の病院外来で測る血圧は、150未満であれば治療しなくていいとされたのだ。

 この基準は妥当なのか、米国心臓病協会の特別研究員などを務める神戸学院大学栄養学部教授の駒村和雄医師に解説してもらった。

「2017年に出たガイドラインは、9本の信頼性の高い臨床研究を総合的に検討した結果に基づいています。それによると、血圧が160以上の人を対象に治療効果を調べた研究では、死亡、脳卒中、心疾患ともリスクが下がっていました。しかし、血圧がそれほど高くない人に厳しい治療をしても、あまり効果はないことがわかりました。2015年、血圧を厳しく下げるほうがよかったという研究も報告されましたが、これは例外的な結果で、今回のガイドラインのほうが、より普遍性が高いと考えられます」

 体力の落ちた高齢者では、血圧を下げ過ぎると元気がなくなり、転倒や骨折、脳梗塞、認知症などのリスクが高まるとも指摘されている。したがって、血圧は高すぎも、下げ過ぎもよくないことを、知っておいたほうがいいだろう。

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