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JINS社長が語った「メガネをタダで配る」未来型ビジネスモデル

「メガネをビジネスする」株式会社ジンズ・田中仁社長インタビュー #2

2018/04/17
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生体情報が蓄積されることで、ライフスタイルが変わる

――脳の情報が得られるんですね。実際これを使うことで、どんなことがわかるんですか?

田中 3つわかることがありまして、その1つが眠気の可能性です。そのため運転時の居眠り防止機器として使うことができ、連携する専用アプリを使えばジンズ・ミームで検知したドライバーの覚醒度をアプリが画面や音声で知らせて安全運転をアシストしてくれます。

 また、2つ目として、6軸の加速度・ジャイロセンサーが入っているので、体の動きがわかる。ランニングフォームが可視化できたり、体軸の歪みやブレが測定できたりするので、それを踏まえたトレーニングの提案が可能となり、スポーツクラブでの導入実績もあります。

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 さらに3つ目として、集中力を計ることができます。現在、働き方改革において生産性を上げることが課題となっていて、非常に注目されています。たとえば労働時間は同じでも、集中の度合いが高くなれば生産性は上がりますよね。そのため厚労省や経産省などからも打診があり、ジンズ・ミームを使った働き方の改善ができないかと現在様々なチャレンジが始まっているところです。

 ジンズ・ミームを通してこのような生体情報が蓄積されることで、ライフスタイルが変わっていく。さらにはメガネのビジネス自体も変わっていくのではないかと思っています。

世界一集中できるワークスペースをオープン

――集中力といえば、昨年には“世界一集中できる環境”をコンセプトとしたワークスペース「Think Lab(シンクラボ)」をオープンされています。メガネの企業が“場”の運営をするのは、非常に珍しいことかと思いますが。

田中 「なぜJINSがワークスペースを?」と思われるかもしれませんが、これもジンズ・ミームで集中力を測定できるからこそ可能になるものです。眼から得られる貴重なデータを有効に活用するという点でも、JINSだからこそやる意味があるチャレンジだと考えています。

 このシンクラボは、これからの働き方のキーワードになると考えています。シンクラボが都内に点在するようになれば、我々は本社もいらないと思っているのですよ。たとえば社員がスマートフォンのなかに専用のアプリを入れて、ゲートを通ることで入館から退館までの労務管理ができれば、毎日朝9時から17時まで集まって仕事をする必要はない、と。

 

――まさに働き方改革ですね。

田中 我々がその先鞭もつけようと思っています。もちろん一緒にいなければできない仕事もあるのですが、チームで集まると一人でこなす仕事が阻害されてしまうこともあります。じつは、当社の社員もジンズ・ミームを使って調べたら、オフィスにいるときが一番集中していない(笑)。カフェや公園など、オフィス外のほうがよほど集中できているのですよ。

――それはおもしろい結果ですね(笑)。この結果も、先ほどおっしゃっていた“眼から得られる貴重なデータ”の一つですね。

田中 はい。ジンズ・ミームと専用のアプリを使えば、誰でも集中時間が可視化できます。今後はこうした関連するソフトやサービスに対価を払うビジネスができないかと模索しているところです。

シンクラボの机に座った筆者