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“治りにくい”肺がん手術の現在 「集学的治療」が欠かせない

2018/07/10
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患者にかかる負担を軽くするために、肺がんでも傷の小さな胸腔鏡手術や、肺の切除を小さくする縮小手術が普及している。ただし、根治性や安全性がおろそかになっては本末転倒だ。

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 肺がんは、日本人でもっとも死亡数の多いがんで、しかも「難治がん」、つまり治りにくいがんの一つとされている。

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 国立がん研究センターの発表によると、2016年の肺がん罹患数は男女合わせて13万3800人で、死亡数は7万7300人と予測されている。その中で、死亡数の7割以上にあたる約5万5200人を男性が占めている。これは喫煙率の違い(男性31.0%、女性9.6%)を反映していると考えられるが、最近は非喫煙者の女性にも肺がんが増えている。

 肺がんは治りにくいだけに、まずは予防が大切だ。喫煙者には禁煙を強く勧めたい。タバコを吸っていると肺がんにかかりやすくなるだけでなく、肺の状態も悪くなるので、術後の合併症を起こしやすくなる。

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 ところで、なぜ肺がんは治りにくいのか。それは、咳、痰、胸痛、息切れといった自覚症状が現れて受診したときには、すでに進行していることが多く、他臓器へも転移しやすいからだ。

 がんが一か所にとどまらず周囲に広がり、遠くのリンパ節や他臓器に転移していると、原則的に手術はできない。そのため、手術の対象となるのは、肺がんと診断された人の4割ほどだと言われている。

 それだけに、手術が受けられる進行度で発見するには肺がん検診を受け、気になる症状がある場合には、早めに検査することが大切だろう。とくに喫煙者は、定期的に検診を受けたほうがいい。ただし、肺がん検診には注意点もある。近年、X線より性能の高いCTによる肺がん検診が普及したが、それによって「すりガラス状陰影」と呼ばれる淡く映る病変が多数見つかるようになったからだ。

 以前は、すりガラス状陰影が見つかると「早期がん」と見なされて、積極的に手術が行われた。しかし最近では、すりガラス状陰影で見つかる病変の中に、ずっと大きさがあまり変わらず、命取りにならないものもあることがわかってきた。悪性度が低いと判断された病変は、経過観察とされる場合もある。

 このように、肺のCT検診を受けるとすりガラス状陰影が見つかって、場合によっては過剰かもしれない検査や治療を受けるデメリットもありうる。CT検診を受ける場合には、その点もよく理解する必要がある。