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もし食道がんになったら――食道を残す「化学放射線療法」は選択すべき?

2018/08/07
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関連死亡は約2%

 もちろん、化学放射線療法で根治できれば、それに越したことはない。しかし、その人のがんが根治できるものかどうか、現段階では事前に知ることができないという難点もある。今後は、化学放射線療法で治せるかどうかを事前に調べることのできる検査法の開発も求められるだろう。

 そして、この治療についてもう1つ、知っておくべきことがある。それは、食道を温存できるからといって、決して手術より「体の負担が少ない治療」とは言えないということだ。医師に聞くと、手術を受けなくて済むことから、体の負担が少ない治療であるかのようなイメージを患者に持たれることがあるという。だが、抗がん剤や放射線にも副作用がつきものだ。

 たとえば抗がん剤によって吐き気や脱毛のほか、腎機能障害、白血球減少などの副作用がある。また放射線によって食道炎や肺炎、心機能低下などの副作用が起こることもある。化学放射線療法の関連死亡は約2%と報告されている。

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 すべての人に深刻な問題が起こるわけではないが、副作用がきついために、最後まで治療を完遂できない患者もいる。実際に筆者も、化学放射線療法に取り組んできた医師から「簡単な治療だと思われないように書いてほしい」と釘を刺されたことがある。

 このようなデメリットがあるからといって、「化学放射線療法を受けるな」と言いたいわけではない。そうではなく、手術だけでなく化学放射線療法にもデメリットがあることを理解したうえで、どの治療にするか判断してほしいのだ。

 なかには「手術は絶対に受けたくない」という人もいるだろう。そんな人のためにも、別の治療法があることを知るのは大きな意義がある。主治医とよく相談して後悔のない治療法を選んでほしい。

出典:文春ムック「有力医師が推薦する がん手術の名医107人」(2016年8月18日発売)

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