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2000年頃から急増している前立腺がん――泌尿器がん手術の現在

2018/10/18

PSA検診の普及で前立腺がんの患者が急増したが、その中にはすぐに治療しなくていいがんもある。また腹腔鏡手術やロボット手術、放射線治療まで、様々な治療の選択肢がある。それぞれの長所・短所を理解することが大切だ。

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 泌尿器科で治療するがんのことを総称して「泌尿器がん」と呼ぶ。その中でも代表的なのが、前立腺がん、腎がん、膀胱がん、精巣がんだ。

 とくに多いのが、男性に特有の前立腺がんで、国立がん研究センターが公表したデータによると、2016年の罹患者数は9万2600人と予測されている。この数は男性に限ると、全がんの中で1位となる。そのほか、腎・尿路(膀胱除く)が2万9400人、膀胱が2万1900人などとなっている。

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 前立腺がんは、罹患者数は多いが、実は死亡者数はそれほど多くなく、1万2300人となっている。なぜ、罹患者数と死亡者数との間に、7倍以上のギャップがあるのか。その理由の一つとして、近年、PSA(前立腺特異抗原)という血液検査を用いた前立腺がん検診が普及したことがあげられる。

 PSAは4ng/mlを超えると、前立腺がん、前立腺肥大症、前立腺炎の可能性があるとされる。前立腺がんの疑いがある場合は、肛門の近くから針を刺して、組織を採る針生検などの精密検査が行われる。そして、採取した組織からがん細胞が見つかれば、前立腺がんと診断されることになる。

 実は、このPSA検診の普及によって、前立腺がんが非常に多く見つかるようになったのだ。実際、前立腺がんの罹患者数の推移を見ると、2000年頃から急激に増加している。かつては、肝がんや膵がんより罹患者数は少ないほどだったのが、いまや男性では胃がん、肺がんも追い抜く勢いで急増した。

ラテントがん(潜在がん)とは何か?

 しかし、死亡者数は年々増えているものの、肝がん、膵がんを抜いてはいない。なぜ、このような現象が起こるのか。それは、PSA検診で見つかるがんの中に、進行がゆっくりで、生涯にわたり生命に悪影響を与えないがんが、多く含まれていると考えられるからだ。

 このようながんを「ラテントがん(潜在がん)」と呼ぶ。実際、前立腺がん以外の病気で亡くなった高齢者を解剖すると、約2割にラテントがんが見つかると言われている。そのため近年では、75歳を超えるような高齢者の場合は、前立腺がんと診断しても、悪性度が高くなければ手術はせず、経過観察やホルモン治療だけで様子を見ることも多くなった。