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巨人ファンが見る「35歳 亀井善行」の野球人生は、まるで極上の名作映画である

文春野球コラム ペナントレース2018

亀井が若手選手たちに抱く想い

 天才揃いのプロ野球界でも、亀井のアマ時代の実績は群を抜いてる。中学時代はボーイズリーグ日本代表に選出され世界大会優勝。上宮太子高のエースとして甲子園出場。中央大学では主将を任され、東都1部リーグ優勝という輝かしい経歴を持つ男。なのに、ここ数年は一貫して「なんでもやる」という献身的なスタンスでチームに貢献し続けている。そんな背番号9の生き様を象徴する発言を、昨年10月のファンクラブ会報誌『G FAN』のインタビュー記事で見つけた。「若手はライバルなのか?」という質問に対して、亀井はこう答えているのだ。

「彼らのことは、ライバルだとは思っていないです。年齢から見たら、彼らが出た方が絶対にいいんです。ましてや僕は、今年の前半戦は代打でやってきている人間。逆に言えば、前半戦彼らがスタメンで出ていたにもかかわらず、結果が出なくて後半戦は出られなくなった。その代わりに僕が出ているわけです。そこは“あいつら、何してんねん”と思うし、早く僕を押しのけて出てきてほしいです」

「彼らが出ることによって、ジャイアンツの未来も変わってくる」とまで言い切るベテランの存在。早く俺を超えていけ。それがチームのためになるのだから…。7月で36歳になる亀井だが、数年前はリーグ屈指と称された外野守備や脚力にはさすがに微妙な衰えも感じる。それでも、チャンスではいまだに最も頼りになる打者だ。よくファンは若手を使えと望むが、世代交代をされる側になるまで現役でいられる選手は数十人に1人だろう。若手時代は「もっとやれる」と檄を飛ばされていたエリートが、ベテランとなり「まだやれる」と大きな拍手を送られる2018年の東京ドームの風景。

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 球場は劇場だ。多くの選手が現れ、夢やぶれて消えていく。もちろん阿部慎之助のように30代後半までずっとレギュラーで主力を張り続けた野球人生は本当に凄い。同時に亀井のような立ち位置で、求められた役割を10数年間に渡りやり切り、生き残った選手も尊敬する。
 
 4月29日のヤクルト戦。2点を追いかける7回裏、代打で同点2点タイムリーを放った阿部と、それに続く代打で逆転打の亀井が直後に1塁側ベンチに並んで座り談笑していた。背番号10と9の一時代を築いた男たちが、今もそれぞれの立場で野球を続けている。まさにあの頃、夢中になって追いかけた「主人公たちの10年後の風景」である。大げさに言えば、長い間プロ野球を、巨人というチームを見続けて本当に良かったなと思えた。

 それはどんな大ヒット映画の続編よりも、心に残るワンシーンだった。

 See you baseball freak……

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