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時事芸人・プチ鹿島が考える“金正恩外交の完璧なフリとオチ”

アドリブ、自虐、持ちネタ……南北首脳会談を振り返る

2018/05/04

金正恩的「緊張と緩和」

 さて、ここまで書くと「金正恩が少し融和ムードを出しただけでメロメロになりやがって簡単な奴め」と思う方もいるに違いない。

 いや、私は金正恩の「ほんとは気さくな人柄なんだよ」ムードなんかには全く興味がなく、私が気になって仕方ないのは「独裁者のユーモア」についてである。

 だって不思議じゃないですか。恐怖政治をしき、政敵を次々と粛清してきたといわれる金正恩。けっこうな地位のオヤジが会議中に居眠りしただけで「消される」。つい1年前には兄貴をマレーシアの空港で殺したと評判だ。

 こんなリーダーが冗談を言ったところで周りは必死の愛想笑いか、凍りついた不器用なリアクションしかできないに決まっている。こんな環境ではユーモアのセンスは磨かれないはずだ。独裁は、笑いを学ぶことに関してはハンデを背負っているはず。

大爆笑もおこった韓国のプレスセンター ©getty

 しかし今回、金正恩氏は生中継を注視する人々をほっこりさせた。このセンスとテクニックは一体どこで学んだのだろう。「独裁者のユーモア」についてわからない、と冒頭で書いたのはそういう意味だ。

 もちろん笑いが生まれやすいのが「緊張と緩和」であり、世界のなかでもこの条件を持っていたのが金正恩であったことを考えれば、笑いをとりやすいアドバンテージはあっただろう。

笑いに厳しい産経師匠

 産経新聞はシビアだった。

「利益最優先 ほほ笑む北」(4月28日)の中で、

《韓国・高麗大教授の南成旭は「人には両面があり、特に社会主義国の指導者はそうだ」と指摘。国際社会が正恩を過小評価してきただけで、悪魔が天使に変わったとみるのは、人質が犯人に好感を抱く一種の「ストックホルム症候群だ」とみる。「外交は利益を得るためにやるものであり、いまはほほ笑み外交で得るものがあると判断したにすぎない」と分析する。》

と載せた。

二人、大爆笑 ©getty

 金正恩で笑う人は「ストックホルム症候群」なのか!? 産経師匠は笑いに厳しい。

 私はここまで切って捨てるのではなく、金正恩のユーモアについてもっと知りたいのだ。あれはどうやって身に付いたの?

 外国(スイス)で留学生活の経験があるからか? それとも海外の映画やテレビを見まくっているからか? 大御所の師匠のように座付き作家がいるのか? もしかしたら家族内だけでは陽気なあんちゃんなのか。

 独裁者はどうやってユーモアを学ぶのか。この困難なお題についてしばらく考えてみたい。