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なぜ#MeToo運動はジャニーズ事務所やTOKIO山口達也には文句を言わないのか?

2018/05/03
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マネジメントをしていたジャニーズ事務所は何をしていたのか?

 人気グループTOKIOの一員として、テレビの定番番組に出演してきた山口氏にとっても、アルコール依存からの脱却は強い仕事上のストレスからの解放を意味していた部分もあるかもしれません。それは分かる。しかし、親しいメンバーとロケで移動したりすれば、本人の悩みもその酒癖も分からないはずがないと思うんですよ。一度は入院していたっていうじゃないですか。ならばなおさら、マネジメントをしていたジャニーズ事務所はどうしてこんな問題を起こすまで山口氏に寄り添ってやれなかったんだ、せめてアルコール依存から脱するところまで伴走してやれなかったんだって思うわけです。

 他のTOKIOメンバーにしても、彼らがお詫びしなければならないほど、TOKIOが悪かったんでしょうか。被災地・福島への貢献も、仕事としてやっていたにせよ愛される行動をとり続けてきたことは称賛されるべきで、それすらも無かったことのように語られるのはもったいないですし、山口氏のしでかしたことをグループで連帯責任とるような内容には違和感があります。江戸時代の五人組制度じゃあるまいし。もしもアルコール依存で山口氏が苦しんでいるとして、それに本当に気づかなかったとしたら、どういう付き合い方だったんだろうあの五人の中では、と思うのです。心が通い合っている存在だったとするならば、飲酒習慣や酒癖から何かしら気づくことはあったであろうし、山口氏も信頼して「実は俺さ」という膝詰めの相談のひとつもあって、強制わいせつで書類送検されるなんてことは止められたと思うんですよ。もちろん、そこに芸能人ならでは、人気者でないと分からない孤独があるとか、何か余人には分からないものはあるとは感じますけれども。

4人の記者会見には多くの報道陣が詰め掛けた ©文藝春秋

 別にこれ、ジャニーズ事務所だけを責めている話じゃないんです。そういう場面に居合わせたかもしれない局の人間や、女子高校生側の事務所は何も言わなかったんでしょうか。高校に通っている共演者の連絡先を聞くだけじゃなく、山口氏の自宅にまで呼ぶというのは尋常じゃありませんが、その番組に出て連絡先を聞くまでのあいだは少なくとも酔っ払っていないわけでしょう。 呼び出したときは酔っていたかもしれないけど、酔った勢いで何をしたくなるか分かっているから、敢えてMCを務めている番組に出演している断りづらい相手を選んで呼び出しをかけていた常習犯だったんじゃないのか、と勘繰られても仕方のないところです。言わば「酒癖がいけないのではなくて、酒癖がその人のいけないところを暴く」という類の話ですよ。

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#MeToo 界隈はなんでこんなに静かなんでしょう

 そういういけない酒癖の人が、大手を振って芸能界の真ん中で活躍されていたというのはアルコール依存の人でも社会で活躍できるという優れたモデルケースなのかもしれないけど、やらかしたことはパワハラでありセクハラです。出演していた女子高校生にきちんと事務所がついていたかは分からないけど、トイレに逃げ込んで助けを求めた女の子も、話を聞いて相手がだれであろうとちゃんと怒ることができた父親も偉い。事実関係は分かりませんが、仮に累犯だとするならば、それまでの間にどれだけの女の子が泣き、親が憤ったかは分からんわけですからね。どうであれ、パワハラやセクハラがあったとして、それが「酒のせいでした」で済ませることはできないし、それなら酒場で女の子がアルバイトしているところでボディタッチしている酔客は全員無罪放免になるのかという話ですから、酒を飲んでいたから免責されるという類の都合の良い話は通らないであろうと思います。

©文藝春秋

 当然、そのような立場ある芸能人が力関係が相対的に弱い女子高校生を呼び出して強制わいせつにいたるわけですから、さぞかし #MeToo 界隈も盛り上がっているのかと思ったらお通夜のように静かなわけです。海外メディアで雨傘もって写真に納まっている人も、赤い #MeToo パネル持って声を張り上げていたおばさんがたも、なんでこんなに静かなんでしょう。