昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

園子温監督はNGでも止めない

稲垣 園さんに僕が出演する第1話の監督をしていただいたきっかけは、僕がホストを務めているトーク番組『ゴロウ・デラックス』にゲストとして来ていただいたことです。2014年に園さんが撮られた映画『TOKYO TRIBE』が公開される直前でした。『愛のむきだし』や『冷たい熱帯魚』などのぶっ飛んだ映画の印象から、ワイルドで怖い方だと思っていたら、意外にも女性的で繊細な方で、番組を忘れて意気投合したんです。そのときに「いつか映画を撮ってください」とお願いしていたので、今回引き受けてくださって光栄でした。

草彅剛 ©文藝春秋

草彅 吾郎ちゃんは映画好きだもんね。どんな監督なの?

稲垣 クランクイン直前に阪本順治監督の映画『半世界』の撮影もしていて、そちらで共演している俳優の長谷川博己(ひろき)さんが園さんの作品に出ているから、事前に特殊な演出方法をすることは聞いていたんだよね。

香取 実際はどうだった?

稲垣 まずNGでも止めない。NGという概念がないのかな。僕がちょっと演技でミスをしても、「カット」と言わない。だからこのまま進めてもいいのかどうか分からないけど、とりあえず「カット」と言われないから続けるしかない。撮影中に車のクラクションが鳴ったり、鳥が鳴いたりしたらさすがにNGになるとは思うんだけど。

香取 それは難しいね。

稲垣 あと、急に本番が始まる。現場で「こう動いて、こう話して」という段取りをしたら、リハーサル無しで「はい本番!」って。今回は、全力で逃げる女・フジコ(馬場ふみか)、彼女を追う極悪人・大門(浅野忠信)、フジコに惚れられる、僕演じるピアニスト、と追いつ追われつの疾走感のある作品なので、現場のライブ感やノリを重視してそう撮ったのかな。撮影はとにかく楽しかった。

 山内監督はどう?

香取慎吾 ©文藝春秋

香取 昔、一度だけ短編映画を撮っていただいたことがあって、「いつかまたお仕事をしたい」と思っていたんだけど、気が付いたら17年も経っていた(笑)。でもこのタイミングでまたご一緒できて本当に嬉しかった。

 また山内監督、いいなぁと思ったのが、タイトルに「慎吾ちゃん」と入っていて、僕が僕自身を演じていること。17年前の短編は僕がなかなか睡眠から目覚めなくて、「慎吾くん、CM撮影間に合わないわよ」と何度も起こされるという話でした。「くん」と「ちゃん」の違いはあるけれど、監督は前の作品のことを覚えててくれて、再び僕自身を演じる作品にしてくれた。愛情を感じました。

稲垣 香取君は歌を歌えなくなった“香取慎吾”役だったけど、歌を食べて生きる少女「歌喰い」役の子はすごく若かったよね。

香取 中島セナちゃんはなんと12歳! もともとモデルをしていて、演技は初めてだったみたいだけど、存在感がすごくあった。山内監督が雑誌で見て、「歌喰い」のイメージにぴったりだったから、台本も彼女に合わせて書いたらしい。

草彅 緊張しただろうね。

香取 だと思う。撮影中ずっと静かにしていたから無理やり気を遣ったわけではないけれど、緊張をほぐしてあげようと、色々と話しかけたんだけど、そんなに話が弾まなくて。で、撮影の中盤ぐらいになってようやく分かったんだよね。緊張しているだけでなくて、もともとそんなに話す子じゃないんだって。

稲垣 そうなんだ(笑)。

香取 これも撮影の終盤に分かったんだけど、彼女は絵を描くのが好きだったのね。映画の中には僕が実際に描いた画もいくつか出てくるから、「この中でどれが一番好き?」って聞いたら、無言で指を指すぐらい静かな子で。でも「歌喰い」が歌を食べてしまうというぶっ飛んだ内容だったので、現場の雰囲気はけっこう賑やかだったよ。

この記事の画像