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孫正義氏“屈辱の合併劇”の舞台裏と新たな危機

2018/05/14
世界の借金王でもある孫氏 ©共同通信社

 ソフトバンクグループは、傘下の米携帯電話会社スプリントをTモバイルと合併させることで合意した。

「実態はスプリントをTモバイルの親会社であるドイツテレコムに売り渡す屈辱の合併劇でした」(メガバンク幹部)

 携帯電話を足がかりに、グローバルに企業買収を続け、一大グループを築いた孫正義会長兼社長(60)。もともとスプリント買収は合併を見据えていた。2013年に買収した時のスプリントは米国3位。4位のTモバイルと合併し、ベライゾン、AT&Tと並ぶ3強となる計画だった。

「日本でソフトバンクが成功したモデルです。しかし、米連邦通信委員会に自由な価格競争を阻害すると反対され、一度は引き下がった。その間にスプリントは契約者数でTモバイルに抜かれ、4位に転落してしまった」(同前)

 だが、孫氏の強気は変わらなかった。

「親交のあるトランプ大統領なら合併は認めるとの期待があった」(同前)

 そうして昨年6月、2度目の合併交渉に臨んだが決裂する。孫氏が求める合併会社の主導権を、シェア上位のTモバイルが容認するはずはなかった。しかし、今春、孫氏がスプリントの経営権を手放す決意を固めたことで合併は一気に進み、合意に至った。背景を金融関係者が解説する。

「孫氏はリスクをとって金を借り買収を重ねてきた。ただ過剰な債務のため格付けは低く、社債の利回りは同業他社よりも数倍高くなる。連結有利子負債は昨年末で14兆7000億円に達し、うちスプリント分は全体の約3割、4兆1000億円。スプリントの利払い費だけで年2700億円に上り、最終赤字が続く要因になっています」

 そこに、新たな危機が。

「金利上昇です。アメリカは金利引き上げに舵を切っており、年内あと2回の利上げが予想される。先日、長期金利は3%に達しました。今回の合併のミソは、スプリントがソフトバンクの連結対象から外れることで4兆円を超える負債と利払いから解放される点にある」(アナリスト)

 今、孫氏の興味は通信インフラからAI、IoT、スマートロボットに移りつつあるという。大博打を打ってきた孫氏の判断は、吉と出るか、凶と出るか。