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卓球3人娘が“掟破りの”南北合同チームを撃破して得た収穫

「大会前の結成ならまだしも決勝トーナメントの最中。有り得ない話です。国際平和は大切ですが、それを錦の御旗にして何でもありにすると、スポーツで最も大切な公平性が損なわれる」

 アマチュアスポーツを長く取材するベテラン記者が呆れるのは、卓球の世界選手権の女子団体戦で突然結成された南北合同チーム“コリア”のことだ。準々決勝の前日、翌日対戦する韓国と北朝鮮から申し出があり、ITTF(国際卓球連盟)が認めたのだ。

「戦力的に見れば韓国の方が強く、実際に対戦したらメダルは韓国のものになる可能性が高かった」(同前)

 そんな“降ってわいた”チームを、日本は4日の準決勝でストレートで撃破した。

「1番手の伊藤美誠(17)は『緊張したことがない』というハートが強い選手で奇想天外なプレーが持ち味。実力通りの圧勝で、いい流れを作った」(卓球担当記者)

 2番手の石川佳純(25)はリオ五輪で負けた因縁の相手に対し、何度もアンラッキーなエッジボールがあったものの執念で勝利。涙を流した。

「この大会からキャプテンを務める彼女は、2020年の東京五輪までリーダーとしてチームを引っ張る役割。重圧を感じていたのでしょう。彼女が勝って泣いたのを初めて見ました」(同前)

 主将に指名されてから、さらに練習時間を増やし、苦手なカットマン対策に取り組んできた成果が出た。

 3番手の平野美宇(18)は「昨年のアジア選手権で中国の3選手を破って優勝したことで、各国に研究されて今は壁にぶつかっている状態。しかし石川の勝利で、持ち味の超攻撃型卓球に火がつき、圧勝しました」(同前)。

準決勝でガッツポーズを見せる平野 ©共同通信社

 決勝では、中国に敗れて3大会連続の銀メダルとなったが、伊藤が元世界ランク1位の選手を破り、“絶対王者”から1勝をもぎとった。

「今の日本チームの実力なら、中国以外には勝って当然ですが、あの異常な状況で南北合同チームを破ったことは、大きな収穫でした。普通では考えられない経験を積んで、チームがまとまったのは確かです。逆にあそこで敗れていたら、東京五輪を目指すチームにとって致命傷になりかねなかった」(同前)

 中国の壁は厚いが、一歩、その差を縮めた勝利だった。