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山奥の寺で行われたブラック企業の「最悪な新人研修」

黄ばんだ布団が出てくると「ぎゃあ」と悲鳴が響いた

2018/05/14

“変わった新人研修”にはご注意を

 この説法をもって寺修行は終了したのですが、「これで参加費1万円か……」と思うと、やりきれない気持ちのまま帰路につきました。

 そもそも、どうしてこのような新人研修を取り入れる会社がいまだに存在しているのでしょうか。

 会社の上司に聞いてみたところ、「あえて困難な環境に身を置くことで、新入社員同士の団結力を生むためだ」と言われました。もし本当にそれが目的なら、こんな手段を取ることはバカらしい。右も左も分からない新入社員を恐怖にさらして考える力を奪い、逃げ場がないようにしている洗脳の一種だと思いませんか。

「新卒で入った会社がブラック企業だ」と気付いたきっかけが、「変わった新人研修だった」という人は少なくありません。

 実際、この寺修行を新人研修にしていた会社は、超が付くほどのブラック企業でした。

偶然見ていたテレビに、あの住職が……

 入った会社が「おかしな会社かもしれない」と思う瞬間があったとき、その直感を信じてみることも大事です。「入った会社で定年まで頑張らないといけない」、「3年間は働かないと転職ができない」なんて思わずに、まずは冷静になって、その会社がどんな会社なのか、働き続けることで心身を消耗せずに済むかどうかを、判断してみてください。

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 与えられた環境をただ受け入れるだけでは、知らないうちに、思考能力を奪われてしまうかもしれません。

 余談ですが、あれから数年が経ち、新人研修のことも忘れていた頃のこと。何気なくテレビを見ていた私の目に、突然あの住職の顔が飛び込んできました。住職が、寺修行に来ている少年に暴力を振るっていたことを報じるニュースでした。その報道を見たときに「ああ、やっぱりな」と思ったのが率直な気持ちです。暴力を振るわれていたのが、あのときの修行僧の少年だったかはわかりませんが、彼はどこか住職に対して怯えていたようにも見えたからです。

 あの寺で修行した経験は、私にとって何の糧にもなりませんでしたし、今でも最悪なものだったと思っています。

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