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ヒャダインが語る「“常勝”日テレの凄さと“エグさ”」

ヒャダイン×てれびのスキマ「日本テレビのえげつない勝ち方」#1

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毎日、視聴率という成績表を突きつけられて

戸部田 今回五味さんにも話を聞きました。五味さんの言葉で印象的だったのは、テレビは毎日、視聴率という成績表を突きつけられているようなもんだと。視聴率が悪ければ自分がやってきたことを否定されているようなものでツラいんだけど、それを何かのせいにせずに向き合うんだと。『SHOW by ショーバイ!!』で初めてクイズ番組をつくったときには、他局のクイズ番組を全部見て、その仕組やセットに至るまで研究して、それをまとめたのがノート7冊分になったそうです。ヒャダインさんは音楽をつくる際、そういう売上の動向とか周りの研究とかはされるんですか?

©深野未季/文藝春秋

ヒャダイン 一応チャートとかチェックしたり、ビルボードでいま流行っている音楽とかを聴いたりはします。でもそんなもんですかね。もちろん今トレンドのものは全部チェックしますけどね。

 すごいなと思うのは、僕も一曲だけ曲を書かせてもらっているBOYS AND MEN(ボーイズアンドメン、通称ボイメン)という名古屋のダンスボーカルグループ。常に売上枚数を出すことを目標にしているので、オリコンが集計するギリギリのタイミングに合わせて、えげつないまでの予約会を始めて、枚数を積むんです。

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 僕、そういう五味さんとかボイメンの戦い方は全然アリだと思うんです。なんでアリかと言うと、番組が評価されているということになるわけじゃないですか。それで「見られている」ということは、スポンサーも付きやすいし、社内でも説得力が出る。ボイメンだって、CDが売れているという事実、例えばお茶の間まで浸透するような曲はなくても、売れているという事実は事実なので、番組に起用してみようかとなると思う。そういったネクストステップが踏めるというのは非常に大きい。だから日テレもそういうやり方をやっているのかなと思います。実際それでネクストステップをどんどん踏めて、新しいことにも挑戦できるわけですしね。

©深野未季/文藝春秋

お金がなかったら何もできない

戸部田 (90年代当時日テレの社長だった)氏家(齊一郎)さんも「とにかく視聴率でトップを獲れ。トップになれば色々なことがついてくる」と大号令をかけていたそうです。

ヒャダイン お金がなかったら何もできないですもんね。いまフジテレビを、見ていても思います(笑)。

戸部田 4月からの新キャッチフレーズが「変わる、フジ 変える、テレビ」ですけど……。

ヒャダイン それで、ガッツポーズとっているのが坂上(忍)さんと梅沢(富美男)さんと林(修)先生という、すでに他局の番組でも出演している人たち……。新番組の初回は見ていないから、なんとも言えないんですけど、予算が少ないのかなという印象を受けてしまいます。

 予算が少ないから番組のクオリティが保てない。クオリティが保てないから、また予算が少なくなるという……、負のスパイラル。でも肝心の意識は変わらないという。

 久保みねヒャダ(久保ミツロウ、能町みね子、ヒャダイン)の3人で『フジテレビ批評』という番組に出たときに、「これからフジテレビ、どうすればいいですか」みたいなことを聞かれて。僕が「お台場にあるのがよくないと思うので、引っ越すべきです」という話をしたんですよね。「お台場ってどうですか」ってアナウンサーの方に聞いたら、「いや、私たち、入社したときからお台場だったので、他はよくわからないんですよ」と。それではダメだと思うんですよ。比較するのもやめてる。

 例えば、夜中の飲みのつき合いとかって、お台場にいたらしんどいじゃないですか。パッと行くところが、汐留(日テレ)だったら新橋とか、ざらにあるわけだし、六本木だって近いし。だから六本木に引っ越したテレ東なんて、まさに大成功だと思うし。そういった飲みとか、人間としてのコミュニケーションというのをないがしろにしてはいけないなと思うんです。