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北朝鮮が拉致を「解決済み」と切り捨て。日本外交4つの「誤算」とは?

南北会談、米朝会談の陰で蚊帳の外に置かれる日本

2018/05/16

(2)対話容認に変化していた米国のサインを見逃す

 転機は「五輪外交」の場、2月9日から始まった平昌冬季五輪だった。

 ワシントン・ポスト紙によると、1月下旬に北朝鮮側から、五輪開会式に出席するマイク・ペンス副大統領と会談したい、との意向が伝えられた。この情報を得たのは米中央情報局(CIA)と報じられており、恐らく北朝鮮情報は韓国国家情報院を通じて、CIAに寄せられたとみられる。

 このとき、米朝接触は実現せず、「ドタキャン」となった。ただ、ペンス副大統領は帰途の機中で同紙のインタビューを受け、文在寅韓国大統領との会談の結果、「北朝鮮に対する最大限の圧力は維持するが、同時に対話もする」ことで米韓が一致した、と明らかにした。

平昌五輪の開会式に出席する各国首脳ら ©JMPA

 米韓両国が対北朝鮮政策をこのように変化させたことは、日本にリアルタイムでは伝えられなかった模様だ。そもそも、トランプ大統領自身が北朝鮮の金正恩委員長と会ってもいいと考えていたことも日本側には知られていなかったとみられる。韓国はトランプ氏のこうした本意を知り、北朝鮮側と首脳会談実現へ向けて動いた可能性がある。

 五輪外交の表舞台では、文大統領と金委員長の妹、金与正氏との会談が注目を浴びた。この席で与正氏は正恩氏の親書を文氏に手渡し、南北首脳会談のための訪朝を要請した。文氏はこれに対して「南北関係の発展には米朝対話が必ず必要だ」と述べて、回答を留保、北朝鮮側の努力を促した。

 しかし、南北融和の機運が高まり始めても、日本側は「ほほえみ外交に目を奪われてはならない」(河野太郎外相)と米韓の政策変更にも向き合おうとしなかった。外務省のブリーフィングを反映してか、日本のメディアも「韓国は前のめり」と冷ややかな報道が目立っていた。

 安倍首相も、平昌五輪開会式に出席したが、南北合同選手団が入場しても、ペンス副大統領と一緒に拍手もせず、笑顔も見せなかった。その画像が報道され、文政権側は不快感を持ったようだ。

(3)事実上解任されたマクマスター氏とは頻繁に接触

 実は、米国の微妙な政策変更は注意深く分析すれば、昨年11月初旬のトランプ大統領によるアジア歴訪の際に確認できたはずだ。

 大統領に同行して来日するのに先立ち、H・R・マクマスター補佐官(国家安全保障問題担当・当時)は11月4日付の読売新聞とのインタビューで、大統領が「軍事措置の可能性について話さなければ無責任」「重大な犠牲……について、共通の理解をしておくことが極めて重要だ」と、まるで開戦を想定した日米首脳会談になるような予測を示していた。

トランプ大統領とは折り合いが悪かったマクマスター補佐官 ©Getty

 しかし、現実にはトランプ大統領は韓国国会で行った演説で北朝鮮と「取引する」などと語り、米メディアは軍事的対決から「交渉にシフト」した、と報道していた。

 マクマスター補佐官はかねて、大統領と折り合いが悪い、とも報じられており、政策的にもこのような齟齬を表面化させ、結局同補佐官は3月22日に事実上解任された。

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