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連載クローズアップ

80歳のリドリー・スコット「映画を作り始めたのは40歳、休んでるヒマはない」

映画『ゲティ家の身代金』――クローズアップ

2018/05/19
リドリー・スコット監督

 1973年、石油王ジャン・ポール・ゲティの孫、ジョン・ポール・ゲティ3世が誘拐された。世界一の大富豪ゲティに要求された身代金は1700万ドル。現在の金額に換算すると100億円を超える。しかし、ゲティは「これを払うと他に14人いる孫も誘拐されてしまう」と支払いを拒否した。この史上最大の誘拐事件を映画化したのは、『ブレードランナー』『グラディエーター』を手がけた巨匠リドリー・スコット監督。御年80歳だが毎年新作を発表している。

「私が映画を作り始めたのは40歳。スタートが遅かったから休んでる暇はない」

 誘拐犯はイタリアのカラブリア地方を支配する犯罪組織ンドランゲタ。合法、非合法あらゆるビジネスを傘下に収め、経済規模はイタリアのGDPの3%を占める。政治家や警察も丸め込み、国も手が出せない国家内国家だ。

「映画製作を始めたら、ンドランゲタの弁護士から手紙が届いたよ。『うちのボスをチンケな悪党として描くなよ。地元の英雄なんだ』って」

 身代金支払いを拒否されたンドランゲタは、人質のポール少年の耳を切断して新聞社に送り付けた。スコット監督は、耳切断の細部まで緻密にスクリーンで見せる。試写では倒れる人も続出した。

「ンドランゲタの残酷ぶりを示す必要があった。これは子供向けの映画じゃない」

 当初、81歳のゲティは58歳のケヴィン・スペイシーが特殊メイクで演じた。ところが公開直前、少年への強制わいせつ行為が発覚。急遽、ベテラン俳優クリストファー・プラマー(88歳)を代役にして撮り直した。