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加計学園の“悪だくみ”は、もはや疑惑のステージを超えた

当初から徹底取材してきた大宅賞作家が緊急寄稿

2018/05/18

 5月10日におこなわれた柳瀬唯夫元首相秘書官の参考人招致に続き、週明けの14日は首相の安倍晋三本人が衆参の予算委員会で森友・加計問題の答弁に立った。のらりくらりと論点をすり替えながら抗弁する姿を見て、その厚顔ぶりに呆れながら、既視感を覚えた向きも少なくないだろう。

柳瀬秘書官との面談は決定的な“キックオフ会談”

第2回大宅壮一メモリアル日本ノンフィクション大賞を受賞した『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』

 事実、疑惑解明のポイントはさほど変わっていない。たとえば2015年4月2日の加計学園関係者や愛媛県、今治市の職員による首相官邸訪問などは、その代表例だ。拙著『悪だくみ 「加計学園」の悲願を叶えた総理の欺瞞』にも書いてきたとおり、このときの首相秘書官・柳瀬との面談は、加計学園にとって獣医学部新設に向けた大きなターニングポイントだった。加計学園や今治市が構造改革特区から国家戦略特区を使った制度の利用に衣替えするにあたり、首相官邸に伺いを立てた決定的な“キックオフ会談”である。

 従前、「記憶の限り、愛媛県や今治市の職員とは会っていない」と繰り返してきた柳瀬は、10日の衆参の予算員会に臨み、「加計学園からアポイントがあったので会った」と修正した上で「その他大勢、10人ほどいた人が今治市や愛媛県だったか、その覚えがない」とも抗弁した。愛媛県の「首相案件」文書が発覚し、慌てて軌道修正したのだろう。が、あまりに突飛な理屈に面食らった。

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同じことの繰り返しでウンザリだ、という声を聞くが……

 森友・加計の「依怙贔屓」疑惑が浮上して1年あまり、この間、同じことの繰り返しでウンザリだ、という声を聞く。だが、そうではない。事実解明に向けた作業はけっこう進んでいる。森友学園に対する国有地値引き問題でいえば、財務省の公文書改ざんや建設業者への口裏合わせの動かぬ証拠が見つかった。依怙贔屓はもはや単なる疑惑ではなく、その根拠がはっきりし、限りなく事実に近い。

参考人招致で答弁する柳瀬氏 ©時事通信社

 また、加計学園の国家戦略特区を使った獣医学部新設については、今度の国会で首相の分身である秘書官が加計と3度も打ち合わせをした事実を白状した。これまで特区の申請者である今治市や愛媛県の官邸訪問について頑なに否定し続けてきた特区担当の秘書官が、加計学園と事前に会議の場を設け、おまけに農水省や文科省の専門家を同席させてレクチャーさせるという特別大サービスまでが明るみに出たのである。

 加えて官邸訪問のあと、内閣府の特区窓口だった審議官(当時は地方創生推進室次長)の藤原豊が加計学園の本拠地である岡山県へ出張、現地では視察に使うための車まで用意してもらっていたという。かたや加計のライバルである京都産業大学を推す京都府の副知事が特区担当大臣の山本幸三を訪問したときは門前払い……。ここへ来て飛び出した特別扱いの新事実は、数えあげればきりがないほどだ。