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連載THIS WEEK

テキーラ、ラー油にスノードーム
日本への覚醒剤密輸・最新手口

source : 週刊文春 2016年2月25日号

genre : ニュース, 社会

押収されたスノードームと覚醒剤
Photo:Kyodo

 ひらひら舞う雪に見えたのは、覚醒剤の結晶だったのか。人形などが入った透明の球体に水が満たされ、ひっくり返すと中の白い粉が雪のように落ちる。クリスマスプレゼントの定番のスノードームに覚醒剤を隠した密輸事件が警視庁に摘発された。他にもテキーラからラー油の瓶までが密輸に使われているという。相も変わらず薬物事件が続くのは、覚醒剤が広く流通し続けていることの裏返し。次々に「開発」される最新密輸手口を警視庁担当記者が解説する。

「清原和博容疑者を逮捕したのと同じ警視庁組織犯罪対策5課が摘発したのが、スノードームを使った密輸事件です。米国から航空貨物で成田空港に届いたのですが、液体が濁っていたことから不審に思った東京税関と警視庁が捜査を開始。スノードーム1個に約935グラム分(末端価格6500万円相当)の覚醒剤が溶け込んでいたことが判明しました」

 これまで覚醒剤は、容器に詰めて飲み込んだまま航空機に搭乗したり、海外旅行の土産品に隠したりするため、コンパクトに済む粉末状が主流だったが、最近は液体などに溶かして大口で運び、沸騰させるなどして粉末に戻すという手口が増えている。

「昨年12月にはメキシコから横浜に届いたテキーラの瓶約1000本に160キロ分(同112億円相当)以上の覚醒剤が溶けていたことが判明し、メキシコ人の会社役員らが警察当局に逮捕されたと発表されました。一昨年9月には香港から都内の中華料理店に輸入されたラー油40本に約10キロ分(同7億円相当)が溶かされていたのを東京税関が発見しています」(同前)

 先行例は米国にある。米国の薬物取り締まり当局の報告書によると、米国でもリンゴジュースやガソリン、ラジエーターの油などの液体に偽装してメキシコから持ち込む例が増えているという。

 捜査関係者は「メキシコは世界最大の覚醒剤製造国。生産量は主要密輸先の米国の消費を遥かに上回る。新たな密輸先として期待されているのが、値段の高い日本だ」と話し、「液体は大口の密輸に向いている。密輸組織の目には、あらゆる液体が覚醒剤を運ぶ手段にしか見えていないのかもしれない」と分析する。

 水魚の交ともいうべき相性に、当局はどう立ち向かうか。