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連載ことばのおもちゃ缶

山田 航
2015/10/25

三段跳びの彼方へ~飛び飛び連想ゲーム(2)
歌人・山田航の原点「ひとりマジカルバナナ」時代

genre : エンタメ, 読書

★「ぺっしゃんこは煎餅」「長いは廊下」……? もっと自然な流れがあるはずだと考えた小学生時代の山田少年は、オリジナルの連想遊び歌に挑む。


デブデブ百貫デブ、車にひかれてぺっしゃんこ、ぺっしゃんこは布団、布団はあったかい、あったかいは暖炉、暖炉は燃える、燃えるは花火、花火は落ちる、落ちるは受験、受験はすべる、すべるは親父のはげ頭

 どうも何らかの呪縛にかかっていたらしく、最後は「すべるは親父のはげ頭」でないといけないと思い込んでいたようだ。よく考えるとそのオチが大して面白いわけではないんだけれど。「新・百貫デブ」としてこのバージョンを作ってみたはいいが、よく考えると「落ちるは受験、受験はすべる」って日本語としてどうよ?と思えてしまった。この並び、「落ちる」と「すべる」の意味が全く一緒じゃないか。それは自分の美学が許さない。改良の余地がある。

デブデブ百貫デブ、車にひかれてぺっしゃんこ、ぺっしゃんこは布団、布団はあったかい、あったかいは暖炉、暖炉は燃える、燃えるは花火、花火は丸い、丸いはボール、ボールは野球、野球はバット、バットは細い、細いはスキー、スキーはすべる、すべるは親父のはげ頭

「すべる」から逆算するかたちで作っていった。「スキーはすべる」、「細いはスキー」をまず作ってから、トンネルのように両端からつなげていった。札幌育ちだからか、どうしたって北国感が出てしまうようだ。そんなふうに、誰にも歌われることのない遊び歌を一人で考えていた。うっかりメロディが口をついてしまったときは、誰かに聞かれていないか大慌てで周囲を見回した。違う言葉をどんどんつなげてゆくという行為に楽しさを見出しているのであり、「百貫デブ」や「はげ頭」といった言葉を面白がっているような子どもじみたセンスの持ち主ではないことだけは激しく主張したかったのだ。

 そんな子どもだったので、『マジカル頭脳パワー!!』に「マジカルバナナ」が登場したときは感動に近いものを覚えた(いったい何度『マジカル頭脳パワー!!』の話をするんだろう……)。「マジカルバナナ」は知っている人も多いだろう。たぶんあの番組でいちばん有名なゲーム。「マジカルバナナ♪→バナナといったら黄色♪→黄色といったらレモン♪」といった具合に、リズムに乗りながら連想ゲームをしてゆくという、単純だけど奥の深いものだった。あのゲームが始まったとき、当時小学生だった私はびっくりした。「自分が一人でひっそりと考えていた遊びが、周りにやろうやろうと誘っても面倒くさがられていた遊びが、テレビで堂々とやられている……!」と。しかも解答者たちはみんな、いい大人なのにすごく楽しそうだ。

 この番組のおかげで、「マジカルバナナをしよう」と言えば「ああ、『マジカル頭脳パワー!!』のね」というふうに簡単に伝わるようになり、遊んでもらいやすくなった。なので『マジカル頭脳パワー!!』にはものすごく感謝している。

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