昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載THIS WEEK

富士フイルムのドン・古森会長の「アメフト経営」にちょっと待った

2018/05/29
古森氏の“パワープレー”に待った ©文藝春秋

「アメフトをやって一番養われたのは闘争心」

 悪質タックルで揺れるアメリカンフットボールだが、経済界でアメフトといえば、こう豪語する富士フイルムホールディングスの古森重隆会長(78)を措いて他にはいない。東大時代、アメフト部に在籍し、その経験から学んだ「力の経営」を掲げてきた古森氏。だが今週、そのタッチダウンパスはインターセプトされ、攻守は入れ替わった。

 富士フイルムによるアメリカの名門・ゼロックスの買収は、「富士フイルムにとって一銭も現金を使わない理想的なスキーム」(メガバンク幹部)と見られていたが、物言う株主は黙っていなかった。

 カール・アイカーン氏やダーウィン・ディーソン氏らゼロックスの株主は、ニューヨーク州上級裁判所に提訴し、4月27日に買収差し止めを認める仮処分が下された。これに揺れたのが、買収に同意していたゼロックスのジェフ・ジェイコブソン社長だ。

「最後は買収契約の破棄に踏み切った。見返りに高額の退職金を認められたとの情報も流れています」(金融関係者)

 今後、富士フイルムのとりうる対応策は3つ。

 まず、ゼロックス株主の要求を飲み特別配当を上積みして買収交渉を継続する。

「混乱を嫌気してゼロックス株は大幅に下落していることから、買収を白紙に戻した後、TOB(株式公開買い付け)に切り替えてもいい」(同前)

 ただ、古森氏が目論んだ現金を使わない買収構想は崩れ去る。

 2つ目は、株主の要求を蹴って訴訟に持ち込む。しかし、「米国の裁判所で富士フイルムに有利な判決は望み薄」(同前)と見られている。

 最後は、買収を白紙に戻す。

「もともと富士フイルムの決算は絶好調。業績の悪いゼロックスを買収するメリットは大きくない」(同前)

 その場合、富士フイルムとゼロックスの合弁会社である富士ゼロックスの立ち位置が難しくなる。また、富士フイルムの売上の43%を占める事務機器分野は、市場の縮小が予測され、ゼロックス買収がなくなれば、成長戦略に疑問符がつけられそうだ。

 富士フイルムのドン・古森会長はここでも「力」で押すのか。次のプレーに注目が集まる。