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王さんも「マネするな」 異色の大打者・柳田悠岐「フルスイングの原点」

広島商→広島経済大を経て11年ドラ2で入団 ©共同通信社

 ソフトバンクの柳田悠岐外野手(29)が絶好調だ。5月18日のロッテ戦で自己新記録となる22試合連続安打を記録するなど、打率は3割8分(25日現在)で、夢の4割達成も期待されている。

 特筆すべきは、柳田が高打率の打者には珍しくフルスイングをウリにしている点だ。

「柳田入団時に王(貞治)会長が現場に『コイツのスイングはいじるな』と言ったというエピソードが知られていますが、その王会長が、今チームで売り出し中の上林誠知に『柳田のスイングはマネするな』と言っているんです」(ソフトバンクに詳しい記者)

 その意味するところは、柳田と同じ左打者で体格も似ているエンゼルスの大谷翔平と比較するとわかりやすい。

「ボールの芯をちゃんと捉える大谷の打球は綺麗なクリーンヒットになる。一方、『バキッ!』という鈍い音と共に飛び出した柳田の打球はスライスしたり、フックしたりで、お世辞にも綺麗とはいえない。芯を外していることも少なくないのですが、フルスイングだから、打球が強くて速く、結果的にヒットになる。若手の“お手本”にはなり辛いんです(笑)」(同前)

 柳田のフルスイングの原点は、小学生時代に遡る。皆で素振りさせられていたときに、どうせやらされるなら、誰にも負けない、強い、速いスイングをしてやろうと思ったのが始まりだったという。

「努力の人ですよ。細かい技術を微調整するのではなく、とにかく身体能力を鍛え上げてフルスイングする。シンプルだから好不調の波が少ない。スイングが速いので、ギリギリまでボールを呼び込める利点もあります」(スポーツ紙デスク)

 座右の銘を聞かれて「プロテイン」と答えた柳田。その飛距離は、NPBきっての身体能力を誇る糸井嘉男(阪神)をして、「バケモノ」と言わしめたという。

 15年には、NPBで初めて首位打者とトリプルスリー(3割、30本、30盗塁)を同時に達成し、流行語大賞にも選ばれたが、本人はいたって謙虚だという。

「すぐ近くに内川(聖一)という無類の打撃技術を持つ巧打者がいるので、自分の記録はともかく、打球の質では及ばないことをよく分かっているからでしょう」(前出・記者)

 夢の大記録に向けて、フルスイングし続けていくだけだ。