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連載THIS WEEK

濱本 良一
2016/12/10

トランプ・蔡英文 異例の電話会談
対中強硬の裏側

source : 週刊文春 2016年12月15日号

genre : ニュース, 政治, 国際

ナヴァロ氏はニュース番組のレギュラーとしても活躍

 台湾の蔡英文総統が今月2日、米国のトランプ次期大統領にかけた国際電話は、ワシントンと北京の双方に大きな波紋を広げた。わずか10分間余りの当選を祝う電話だったが、双方は経済協力や安全保障問題なども協議したとされる。中国の王毅外相は「(国際電話は)台湾側の小細工だ」と不快感を露わにし、米オバマ政権は事前に知らされていなかったことが分かった。

 1979年の米中国交正常化に伴う米台断交以来、次期米大統領と台湾総統との“接触”は、「一つの中国」政策を順守する現行の米中外交の枠組みではあり得ないこと。予測不能のトランプ外交を象徴する出来事だった。

 トランプ氏は大統領選中から「中国からの輸入品に一律45%を課税する」、「中国の為替操作に立ち向かう」など中国に対して過激発言を繰り返してきた。実はこうした発言の多くは、対中強硬派として知られるカリフォルニア大学アーバイン校のピーター・ナヴァロ教授(経済・公共政策)の見解であることが判明している。

 ナヴァロ氏はトランプ氏が共和党候補に正式指名された直後に公表された14名の陣営経済顧問メンバーの一員として米中通商問題を担当し、『米中もし戦わば』(文藝春秋刊)という著書もある。

 ナヴァロ氏は最近も、米国は台湾にディーゼル型潜水艦を売却し、閣僚級を含む米政府高官を派遣すべきだなどと提言している。中国製品に一律45%の課税を行えば、中国に進出している米企業はたちまち報復を受けることは確実だ。トランプ外交は米中衝突を引き起こしかねない粗削りな要素を孕んでいる。

 トランプ氏は11月17日、トランプタワーにヘンリー・キッシンジャー元国務長官を迎え入れ、米中問題などについて教えを乞うた。

 そのキッシンジャー氏は今月2日、北京を訪れ、習近平国家主席らと会談したが、同じ日の深夜に蔡総統とトランプ氏は電話会談しており、中国側は改めて“トランプ不信”を深めていよう。

 蔡氏との会談への批判に対し、トランプ氏は自身のツイッターで、「(台湾総統からの)祝いの電話は受けるべきではないとは面白い」と反発、今後のトランプ対中外交は予断を許さない。

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