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正直な人は運がいい

鈴木 あとで知ったことですが、当時の吾朗君の勤務先は経営状況がかんばしくなかったそうです。だから即決してくれた。これも運ですよ。こうした運を少しずつ積み重ねていくと、最後に大きな運になる。

大泉 そうした運気をよむのがプロデューサーですか。

©石川啓次/文藝春秋

鈴木 自覚はしていませんけどね。 

 ふりかえると就職した徳間書店で、運を考えざるをえない状況に陥ったのが大きいと思います。最初に配属されたのは「アサヒ芸能」という週刊誌ですが、入ってビックリしましたね。給料が出ると、バクチをやらされるんですよ。もう何十年も前の話ですけどね。当時、給料は現金払いですから、「金がない」といって逃げられません。だからバクチをせざるをえない。

 このときは努力しましたよ。負けないように、勝たないように、必死で勉強した。

大泉 負けたら生活できないし、かといって先輩相手に勝つと後々やりづらいですよね。このとき運をたぐり寄せるために必死で考えたわけですか。手札をどう切ろうか、と。

 では現在は運をたぐり寄せるために、プロデューサーとして、どのようなことをお考えなのですか。

鈴木 運のいい人を集めますね。

大泉 その人の運がいいか悪いか、どのように判断するのですか。

鈴木 正直な人は運がいい。それは経験上わかる。ウソをつく人は運が悪い。どこかに運を持っていってしまうんですね。

大泉 なるほど。

製作委員会方式の創始者として言いたいこと

鈴木 これは最近、他の方から言われたことですが、映画を作るときに、いくつもの企業から出資をつのる製作委員会方式は、どうも僕が最初に始めたらしいんです。

 各社の人たちが集まったとき、最初に私はこういいます。

「皆さんは自分の会社を背負っているので、いろんな思惑があると思います。しかし、まず自社の損得はあきらめてほしい。あきらめないと儲かりません。あくまで目標は、映画を作って、それを世の中に送り出すこと。それが大成功したら儲かります。そのとき皆さんにも分け前がある。だから皆さんにお願いしたいのは、まず背負っている会社を横に置いてほしい」

 その後も同じことを言い続けます。それぞれのメンバーが自分たちの損得で、勝手なことを言い出したら、うまくいくわけありません。

大泉 とはいえ、自社の利益を第一に考える人はいますよね。

鈴木 います。露骨にやる人もいました。そのときは露骨に排除します。「来ないでくれ」と、ジブリへの出入り禁止をはっきり言い渡す。こうした荒療治も必要なのです。