昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

連載テレビ健康診断

ウソのツイートを検証 “遅いメディア”テレビができること――てれびのスキマ「テレビ健康診断」

『ファクトリサーチTV』(テレビ朝日)

 4月12日、「入学式でいきなり校長が遊ぶことも大切とか言ってフォートナイトをプレイし始めて爆笑なんだけど」と生徒たちの前で校長が舞台上の大きなスクリーンでオンラインゲームをプレイする画像が貼られた投稿がTwitter上でまたたく間に拡散された。だが、翌日、ツイート主本人が、「ピュアな方を騙してるようで心が痛いので追記します。完全に軽い気持ちで作ったコラ画像です」と、それがコラージュによるフェイク画像であることを明かした。

『ファクトリサーチTV』(テレビ朝日)では、このツイート主になんと自宅で直接取材。彼は18歳の慶應義塾大学入学を目指す浪人生だという。ネットで元ネタの画像を発見し、それに今流行のゲーム画像をコラージュしたら面白いと思い、軽いネタのつもりで投稿した。これまでもそうした投稿がバズったことがあり「面白いといわれるのが嬉しかった」のが動機らしい。パソコンの専門知識があるわけではない。にもかかわらず、無料の編集ソフトでつくれてしまうのだ。怖い。

 さらに恐ろしいのは、最先端のAIを使えば喋ってないことまで実際に喋っているかのようなフェイク動画もつくれてしまうという。証拠が捏造されてしまうし、逆に本当の証拠でも、捏造だと言い張られると荒唐無稽の戯言とは言い切れなくなってしまう。

 この番組は「その週バズったニュースを検証し、フェイクかどうか示し、ネタ元まで遡る週末のテレビ番組」をやりたいという、いとうせいこうのツイートから始まった。それを読んだ番組スタッフが翌日企画書を出し、すぐに番組が立ち上がったという。タレントコメンテーター全盛の情報バラエティ番組と違い、この番組の出演者は何らかの専門家ばかり。その専門知識をもとにハッキリと答えを出すわけではなく、事実はどうなっているかを丁寧に検証し提示した上で、さあどう考えるかと、「考え続ける」のがコンセプトだ。

番組の発案者であるいとうせいこう ©文藝春秋

 いとうせいこうは「テレビの力の見せ時」だという。かつてテレビは、紙メディアと比較して「早い」メディアだと言われた。だがネットが登場したいま、テレビは「遅い」。けれど「トロいからこそできる検証」があるはずだと。実際、これが放送されたのは5月12日深夜。冒頭のツイートがされたちょうど1ヶ月後だ。何もかもが「早く」なっている時代。ちょっと立ち止まる、こんな番組が欲しかった。

▼『ファクトリサーチTV』
テレビ朝日 土 24:35~25:00
http://www.tv-asahi.co.jp/factresearchtv/#/