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問題だらけの日本スポーツ界……古い組織を変えるのは“非連続性”だ

横浜DeNAベイスターズ前社長・池田純氏インタビュー

2018/06/01

 いま、日本のスポーツ界は岐路に立っている。

 横綱による暴力事件に揺れた相撲界。指導者によるパワハラ行為が明るみに出たレスリング界。そして、大学定期戦での悪質なタックルに端を発して大騒動に発展しているアメリカンフットボール界……。

 サッカーでは日本代表監督を解任されたハリルホジッチ氏が日本サッカー協会を提訴する事態となり、バドミントンでも選手の所属先移籍をめぐるトラブルが報じられた。

DeNAベイスターズ前社長が語る「日本スポーツの問題点」

 こうした現状に対し「組織に問題がある」と指摘するのは、池田純氏だ。

スポーツビジネスを学ぶ「NSBC」の学長を務める池田純氏 ©杉山拓也/文藝春秋

 横浜DeNAベイスターズの前社長として、球団の業績を24億円の赤字から黒字化へと導いた実績を持つ池田氏は現在、『Number Sports Business College(NSBC)』の学長を務める。NSBCは2期目を迎え、登壇したゲストは30名近い。スポーツ界のキーマンとの対話を重ねる中で浮かび上がってきたのが、協会や連盟、あるいは企業や大学といった「組織」に大きな問題点が潜んでいるという気づきだった。

「いま、いろいろな競技で問題が起きていますが、その根本には構造的な問題があるのではないかと思います。特に、上層部にいるのが利害関係者だという点ですね。たとえば外からやってきた若い人のように、利害関係がない人は『ファンや世の中が何を求めているか』という目線で運営することができる。

 でも利害関係者がトップにいると、忖度が生まれたり、意思決定が既存の業界寄りのものになってしまいます。プロ野球の球団に親会社がいるのも同じ構図。試合中継のあり方をとってみても、ファンにとってより利便性のあるサービスが提供できるはずなのに、親会社との利害関係の中で放映権の扱いにはさまざまな制限がかかってくる。要はアジェンダが変わってきてしまうんです」

さいたま市長、さいたまスポーツコミッション会長を務める清水勇人氏(右)を迎えた前回のNSBC ©末永裕樹/文藝春秋

組織の防衛や要職者の保身が目立つ

 池田氏の言うアジェンダとは、組織が意思決定し、行動する際の指針となる理念や大方針のこと。スポーツの企業や競技団体が掲げるべきアジェンダとしては、その競技の幅広い普及と将来にわたる発展、競技を通じた心身の健全な成長、プロならばファン目線に立ったビジネス施策によって一定の利益をあげることなども入ってくるだろう。

 しかし、現状を見る限り、ひとたび大きな問題が起きると組織の防衛や要職者の保身を優先し、世間が期待する解決の道筋とは乖離した対応に終始しているケースがほとんどに思える。速やかな調査による事実関係の把握と、それに基づく厳正な処分、社会に対する声明の発表などを率先して行い、各々が管轄する競技の環境を一刻も早く正常化させようという姿勢がなかなか見えてこないのだ。