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「昔コンビニ、今LINE」メディアの勢いを見抜く――鈴木敏夫が語る「これからのプロデューサー論」

鈴木敏夫×大泉啓一郎『新貿易立国論』対談#3

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グローバル・スタンダードにこだわらない

大泉 対談の冒頭(第1回)で「Made by Japan戦略」と「Made in Japan戦略」と申し上げましたが、「Made by Japan戦略」が成立するのは、デジタル化で生産技術の格差がなくなり、同じ製品を、各国で同じように作ることができるようになったからです。

 だから逆に、日本から海外を狙う「Made in Japan戦略」を成功させるためには、日本でしか作れないものを売らなければいけない。このときに必要なのが、繰り返しになりますが「ストーリー」です。言葉を替えれば「日本の強み」「日本の独自性」です。

鈴木 なるほど。

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大泉 鈴木さんはご著書『仕事道楽 新版』(岩波新書)に、「ディズニーのように、世界中どこでも楽しめる〈グローバル・スタンダード〉にはこだわっていません」「自分たちが追求してきた映像技術のなかから、結果として〈時代性と普遍性〉が立ち上がってくるような作品を作っていきたい」と書いておられます。

 グローバル化やデジタル化が進み、世界のどこでも同じものが作れる時代になるとき、ここに「日本で何を作るのか」という課題の答えがあるのではないでしょうか。

大泉啓一郎さん ©石川啓次/文藝春秋

独自色の強い名古屋の価値

鈴木 うーん……、強みや独自性と聞いて思い浮かんだのが名古屋です。名古屋という土地の強さ。いろんな報道でご存知のように、2022年度に長久手市の愛知万博の会場跡地にある公園で、ジブリパークを開業することが決まりました。その交渉のため、このところ何度も名古屋に足を運び、愛知県の大村知事と面会しています。

大泉 名古屋は鈴木さんの出身地ですね。

鈴木 ええ。だから逆にこれまでは、あまり行かなかったのですが、このところ行くたびに、「名古屋は東京とは違うな」という思いを強くしています。

 ある銀行の常務にそう話したところ、「当然じゃないですか。名古屋は別の国だと思っています」と返ってきました(笑)。

「日本全国を歩くのが私の仕事ですが、いまだに名古屋だけは昭和が残っていますよ。ものづくりが終わっていない」

 それが、あの街の雰囲気を作っているというのです。そう聞いて改めて見てみると、発見がたくさんある。古いものが残っている。名古屋城のそばにある散髪屋は、私が高校生だった50年以上前からあるのではないでしょうか(笑)。

大泉 古い喫茶店も多いですし。

鈴木 そうそう。そこで大村知事に「愛知県を『昭和の街』として売り出したらどうですか」なんて言ってしまいました。「知事はずっと名古屋におられるから、その価値に気がつかないかもしれませんが」と。

 ただ日本には、名古屋以外にも、そうした場所はたくさんあると思いますよ。

大泉 その独自性がストーリーになり、売り物になる。なにも世界標準に合わせることはないわけです。

鈴木 そうですよ。その地域に根ざしたものが重要です。