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究極のドラゴンズあるある、攻撃時の「無死満塁は大ピンチ」を乗り越えろ

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/09

 2013年に『中日ドラゴンズあるある』という本を出させていただいたとき、もっとも共感と反響を巻き起こした「ドラゴンズあるある」がこれだった。

「満塁のチャンスはピンチ。無死満塁は大ピンチ」

 あれから5年の月日が流れたが、今でもドラゴンズは満塁、とりわけ無死満塁にからっきし弱い。普通、満塁のチャンスになればどのチームのファンもイケイケで盛り上がるのに、ドラゴンズファンのタイムラインは「またピンチが来てしまった」「満塁にするなんて卑怯だ」という悲鳴に近いツイートで溢れかえる。そして案の定、点が入らない。ガックリするのだが、もはや体が慣れてしまった。

今年も8度の無死満塁で点が入ったのは3度だけ……

 今年のドラゴンズは非常にエキサイティングな戦いを繰り広げているのだが、無死満塁は相変わらず苦手だ。

 4月29日のDeNA戦では、6回に1点を先制してなお無死満塁のチャンスが訪れたが、平田良介がゲッツー、高橋周平も倒れて無得点に終わった。さらに同点の8回にも再び無死満塁になったが、またしても平田、高橋が連続三振、福田永将が倒れて無得点。結局試合は延長で負けてしまった。試合後の森繁和監督のコメントは「無死満塁で攻め攻めでイケイケなんだけど、バッターが、チャンスがピンチになってしまっているようだ」というもの。「ドラゴンズあるある」そのまんま!

 5月6日の阪神戦は、無死満塁、1死満塁、2死満塁とあらゆるバリエーションの満塁のチャンスがあったが、計6打数ノーヒットですべて無得点。内野ゴロや外野フライでも点が取れないのがすごい(ひどい)。結局、試合は7対5で負け。森監督の試合後のコメントは「タラレバ? タラレバは好きじゃない」だった。

 今シーズンはここまで8回も無死満塁のチャンスを迎えているが、点が入ったのはわずか3回のみ。そのうち2回はセ・リーグ首位打者、ソイロ・アルモンテのタイムリーである。さすが神モンテ様……(もう1回はダヤン・ビシエドの併殺の間に1点のみ)。

頼りになるのは“神モンテ”ことアルモンテだけ

無死満塁では本当に点が入りにくいのか?

 たしかに、俗に「無死満塁は点が入りにくい」と言われている。満塁はフォースプレーになるため、前進守備を敷いているときに内野ゴロが飛べばホームゲッツーが取りやすくなるからだ。先頭打者が凡退すると、後続が力んで凡退しやすくなるとも言われている。

 しかし、実際には「無死満塁は点が入りにくい」ことなどない。『勝てる野球の統計学 セイバーメトリクス』(鳥越規央、データスタジアム野球事業部・著/岩波科学ライブラリー)という本には、無死満塁の「状況別得点確率」は83.7%だと記されていた(2004~2013年NPBを対象)。つまり、無死満塁になれば80%以上の確率で点が入るということだ。また「状況別得点期待値」は2.2点とされている。無死満塁から攻撃を始めれば、平均2点以上入るということになる。

 無死満塁は圧倒的な確率で点が入る。球史に残る「江夏の21球」は、日本シリーズ最終戦の最終回という土壇場で江夏豊が無死満塁のピンチを無得点に抑えるという名場面だが、逆に言えば、稀有なシーンだったからこそ、強烈な印象を残しているとも言えるだろう。

 しかし、だとすると、ますますドラゴンズの「無死満塁は大ピンチ」の説明がつかない。80%以上の確率で点が入るはずなのに、今年のドラゴンズは40%以下の確率でしか点が取れていないのだ。もはや人智を超えた力が働いているとしか思えない。「無死満塁は大ピンチ」は「あるある」を超えて、呪いの言葉になってしまったのだろうか……。