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「迷ったら前へ」 楽天選手に聞いた星野仙一さんから教わったこと

文春野球コラム ペナントレース2018 対戦テーマ「星野仙一」

2018/06/13
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「迷ったら前へ。苦しかったら前に。つらかったら前に。後悔するのはそのあと、そのずっと後でいい」

 言わずと知れた星野仙一氏の言葉である。この言葉で自分の進むべき道を決めた選手がいる。

星野さんの言葉に心を動かされた選手たち

岸孝之選手入団会見 ©RakutenEagles

 2016年11月18日。岸孝之選手はFA権を行使して楽天イーグルスに入団するにあたり、星野さんの「迷ったら前へ」という、この言葉が最後の決め手となったと入団会見で話した。そして星野氏は岸選手に「優勝するには(岸選手が)必要なんだ。何度も何度も伝えた」と会見で述べた。

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「迷ったら前へ」という一言がなければ、楽天イーグルスの岸選手は誕生しなかったかもしれない。星野さんの言葉が人の心を動かし、多くの選手やファンを魅了するのは何故だろう。

 楽天イーグルスの選手・関係者に星野仙一氏から学んだことについて聞いてみた。

2013年の星野仙一氏と嶋基宏選手 ©RakutenEagles

 嶋基宏選手は「勝利への執念、相手に向かっていく姿勢、なにくそと思ってやっていかないといけない、というのは星野監督から学んだので、それをこの若いチームにどんどん広めていきたいです」と2月の久米島キャンプで話してくれた。

 闘将から得た勝つことへの執念を、これから先、チームに伝承していくのだと語ってくれた嶋選手は「そしていつか監督のような厳しさの中に愛情のある人間になりたいです」とコメントしている。人として、男としての憧れがこの言葉から感じられた。

星野仙一氏の想いを語ってくれた金刃憲人打撃投手 ©河内一朗

 今季から打撃投手を務める金刃憲人さんにも話を聞かせてもらった。金刃打撃投手は2012年の秋にトレードで巨人から楽天イーグルスに移籍。2013年は1軍公式戦で39試合に登板。防御率も自己最高の1.85に達するなど、リーグ優勝および日本シリーズ初優勝に貢献した。

金刃さん「僕が2013シーズンからトレードで来て、その時の監督が星野さんでした。丁度1軍に上がる時に、それまでオーバースローだったのですが、『お前、(腕を)下げてみろ』と言われて、『はい』としか言いようがなくて、毎朝早く来て室内練習場でコーチと一緒に投げ込みました。そこで新しい自分に出会えました」

 星野仙一氏から投球フォームの改造を勧められ、これを機に従来のオーバースローからサイドスローへ転向し、チームの救援投手として活躍。

 金刃さん曰く「そのままオーバースローでいっていたら1年で野球人生終わっていたと思います。星野さんの一言が転機になりましたし、東北の球団に来られて良かったと思わせてくれました!」まさに星野氏の一言で自身の野球人生が変わったと教えてくれた。

阿部俊人アカデミーコーチ ©河内一朗

 今年から楽天イーグルスのベースボールスクールのコーチに就任した阿部俊人アカデミーコーチ「星野さんが監督になられた2011年に僕も入団して、縁をすごく感じています。色々な思い出がありますが、僕が試合で負けるぐらいのとんでもないミスをして『もう使わない』と言われた事があったのですが、次の日の試合で、同じような場面で使ってくれたのです。そこには本当の『愛』がありましたし、この人に絶対ついていこう、そして胴上げしたいと思いました」星野氏の選手への愛が存分に感じられるエピソードである。

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