文春オンライン

韓国パシュート事件の“闇”は、日大アメフト部のような後味の悪さだった

連盟に君臨するドン、選手をかばうどころか責任転嫁するコーチ……

2018/06/01
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韓国の民放番組が暴いていたウラの顔

 政府の調査が始まった4月初めには、民放SBSの時事番組『それが知りたい』がチョン氏のウラの顔を暴いていた。

 番組では、「言うことを聞かなかった選手はほとんどいない。みな卒業しないといけないから」(韓国体育大学学生)、「『イ・スンフン(マススタートで金メダル)選手が最大限体力を維持できるようにしないといけない』と言われた。(自分は)はなから捨てるカードだった」(元国家代表選手)などの証言が次々と飛び出したが、衝撃的だったのは、骨肉腫を患った選手の手術を遅らせたことだ。

 肩を痛めたこの選手は当初、できた腫瘍が良性と診断されたが、一刻も早く手術をさせたかった母親にチョン氏はこう高圧的に話したという。

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「お母さん、何を言っているんですか。今、良性じゃないですか。(悪性になる確率は)200万分の1でしょう。(ソチ)オリンピックが迫っているのに手術しようなんて。オリンピックが終わってからでも遅くない」(SBS『それが知りたい』より)

文在寅大統領は国民との対話を強調し、国民請願掲示板を作ったが、単なる憂さ晴らしにすぎない内容もあり……。写真は、韓国の青瓦台(大統領府) ©iStock.com

ショートトラックのエースは、24歳の若さで亡くなった

 この選手はショートトラックのエースだった。当時、テレビカメラが捉えた練習風景からは、ユニフォームの上からもわかるほど大きく腫れた肩が映し出されていて、本人も周囲に「辞めたい。しんどい」とこぼしていたが、チョン氏は休むことを許さなかったという。結局、ソチオリンピックの1ヶ月前に腫瘍は悪性と診断され、この選手はオリンピックに出場することなく、24歳の若さで他界した。

 母親は「(チョン氏が息子の)大学後の進路まで決めていたので強く言えなかった。あの時手術を受けさせていれば……」と番組で涙ながらに語っていた。

「チョン氏は調査が始まろうとしていた3月半ばに疑惑の目が向けられると、処分を怖れてか、連盟の副会長を自ら辞任しました。しかし、さかのぼって懲戒処分ができるそうで、これからもさらに調査されるといわれています。本人は、『悪意があったのではなく氷上連盟から手伝ってくれといわれて手伝っただけ』と弁明しているようですが、明らかになったのも氷山の一角といわれていますから、さらに驚くような事実が飛び出すかもしれません」(同前)