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3階級制覇・井上尚弥に倒された男の減量法“水抜き”の衝撃

マクドネルは「地球上で一番強い」と井上に脱帽 ©共同通信社

 5月25日に行われたボクシングWBA世界バンタム級タイトルマッチ。挑戦者の井上尚弥(25)は112秒で、10年間無敗のチャンピオン、ジェイミー・マクドネル(32)にTKO勝ちし、日本人5人目の3階級制覇を国内最速の16戦目で達成した。

 井上の強さばかりが目立った中で気になったのは、対戦相手・マクドネルの“減量”だった。試合前日の計量に1時間以上遅刻した彼は、調印式とは別人の様に頬がこけ、井上をして「40歳ぐらいに老けたみたい」と言わしめたが、試合当日には何と12キロも増量。たった1日でそんな体重の増減が可能なのか?

「かつての減量は、長期間の食事制限と練習で徐々に絞っていくものでしたが、これだと脂肪だけでなく筋肉も減るんです」(ボクシング記者)

 そのためスタミナやパワーもムダに削ってしまう。

「そこで、最近流行っているのは、なるべく筋肉を落とさないようにする“水抜き”という方法です。試合の1週間ほど前から身体の隅々にまで水分が行き渡るように真水を飲み出し、計量の直前にサウナや激しい練習をして一気に水分を出すんです」(同前)

 水抜きでの無理のない減量は体重の3~5%とされるが、実際には、ほとんどの選手がその範囲を越えて、一時的な脱水症状に陥るという。

「今回のマクドネルに至っては計量後、しばらく横になったままで、自分で服も着られなかった。あれは1日で5キロくらい減らしたんじゃないですか」(当日取材した記者)

 試合当日のマクドネルは肌ツヤも良く、ほぼ前々日の様子に戻っていた。水抜きをした身体は絞りに絞ったスポンジ同様で、計量後は、それを水に浸すわけだが、この1日のコンディショニングが重要なのだという。

「人間の身体はスポンジではないので、内臓にも負担がかかる。その加減がポイントなんですが、一気に12キロの増量なんて、聞いたことがない。それだけ過度な水抜きをしたんでしょう」(同前)

 もっとも減量の影響が現れる前に勝負は決していた。

「当日の体重差は約6キロでしたが、井上は『リバウンドが大きい分、動きも鈍いし、ボディも効きやすくなる』と冷静でした」(同前)

“モンスター”の異名通りの衝撃的な強さだった。