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「愛する妻を失った男が、執念で社会を変えた」岡村弁護士、18年の闘い

 2000年に設立された「全国犯罪被害者の会(あすの会)」は5月25日、東京・霞が関の司法記者クラブで記者会見し、解散式に当たる「最終大会」を6月3日に開くと明らかにした。創始メンバーの一人で顧問の岡村勲弁護士(89)自身も妻を殺害された被害者遺族。氏は会見で「これからの被害者のためにやってきたことを誇りに思う」と涙ぐんだ。

弁護士生活59年の岡村勲氏 ©共同通信社

 同会は設立以降、「刑事裁判の“証拠品”でしかない被害者」の権利向上を訴え、殺人事件など凶悪犯罪の時効撤廃や裁判への被害者参加制度、裁判所の加害者に対する損害賠償命令制度などを実現した。執行部を中心として死刑廃止を掲げる日本弁護士連合会にも、強力に反対の意向を表明してきた。

 司法記者が説明する。

「岡村さんたちは会見で、最近、会の入会者が減ったことにも触れました。解散する理由の1つ、ということだったのだと思います。ただ、入会者が減ったのは、『あすの会』の活動の成果として、全国各地で被害者支援団体ができたからです。そうした意味では、会は掲げた目標を十分に達成したと言えるでしょう」

 岡村氏は1997年、自身が顧問を務めていた証券会社を恨む男により、妻を殺害された。「弁護士生活38年目にして犯罪被害者の遺族となって、被害者や家族がどんなに悲惨で、不公正な取り扱いを受けてるかということ」(「あすの会」公式サイトより)を知ったという。会見では、「家内は自分の身代わりで殺された。だから、返り討ちをしたいと。それなら制度を根こそぎ変えて、墓場に行こうと思った」と語った。岡村氏は日弁連副会長も経験しているが、被害者より加害者の人権保護に偏りがちな日弁連に対しても批判してきた。

「岡村さんの取り組みを振り返ると、愛する妻を失った1人の男性が、執念で社会を変えたのだと言っていいと思います。ただ、犯罪被害者への金銭的な補償はまだまだ十分ではなく、今後の課題として残っています」(前出・司法記者)

 通り魔やネット犯罪、薬物中毒者による交通死傷事故など、いつ誰が被害者になるか分からない事件もいまだ多い。社会全体が今一度、当事者だけに任せない被害者支援の在り方について真剣に考える必要があるだろう。