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連載高野秀行のヘンな食べもの

耳かき作業で作るシルクロード食――高野秀行のヘンな食べもの

2018/06/05

※前回「トルコの美形民族が極小餃子マントゥ」より続く

イラスト 小幡彩貴

 トルコの極小餃子作りを習う話の続き。

 二・五センチ四方の皮に具を包む。正直「ありえねー!」と思った。包める具は「耳かき一杯分」なのだ。実際には一本の箸でタネをつついて具を少しとる。ちょうどいい量をとるのがとても難しい。多すぎたり少なすぎたり。本当に耳かきを用意すべきだったと嘆息した。

 サラームさんは「タマネギのみじん切りが粗すぎた」と悔やんでいた。たしかに五ミリのみじんは下手すると、それだけで具一つ分になってしまう。

 この微量の具を極小皮にのせ、四つの端を寄せるように包む。千代紙を折っているよう。

マントゥ一つ分の皮と具
マントゥを包む

「てきとうでいいんですよ。トルコのおばちゃんたちは本当にてきとうだから。煮てるときに具が出ちゃっても気にしない」とサラームさん。本欄担当編集者のSさんとサラームさんの友人Fさんも参加し、四人で頑張る。

 途中から、一人が箸で生地に具を載せ、他の三人がそれを包むという分業体制にしたら、仕事がはかどるようになった。「さすがトヨタ式!」「いや、産業革命!」などとトンチンカンな歓声をあげるのは、ちまちま作業でハイになってきていることもある。そう、みんなで細かい作業を続けていると、仲間意識が深まるのだ。“極小”には「アホ」だけではなく、コミュニティ料理の一面もあるようだ。

分業体制でマントゥに具をのせる

 サラームさんには「三時間かかる」と脅されていたが、トヨタ式のおかげもあって、一時間で終了。あとはソースを二種類。一つはヨーグルトとすり下ろしニンニクのソース、もう一つはフライパンを火にかけ、バター、トマトペースト、スペアミント、プル・ビペール、水を加えたトマトソース。

 ふつう、ソースを二種類なんて面倒くさいと思うが、耳かき作業を一時間やった後では何もかもが「お手軽」に感じてしまう。

 最後はマントゥを茹でる。トルコ人は十五分も煮て、トロトロにするのが好きだそうだが、私たち日本人はやはりグルテンのシコシコ感が好きなので五分ほどで火を止めた。

茹でたマントゥ

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