昭和34年(1959年)創刊の総合週刊誌「週刊文春」の紹介サイトです。最新号やバックナンバーから、いくつか記事を掲載していきます。各号の目次や定期購読のご案内も掲載しています。

西武・菊池雄星が語る“みんなが求めている姿”になるということ

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/21

 5月20日、左肩の機能低下のため、まだ二軍調整中だった菊池雄星投手のさりげない一言に、心を鷲掴みにされた。

 その日は、本人いわく、「(離脱後)初めてブルペンで100%の力で投げた」日。「これだけ痛みなく、違和感なく投げられたのは、キャンプ以来でした」。完全復帰へのスタートラインに立てた確信を持てたからだろう。ブルペンから引き上げてきた日本最高左腕投手は、気持ちよさそうに、穏やかな笑顔で汗をぬぐっていた。

みんなが求めている「菊池雄星」とは

 3年連続の開幕投手を務め、戦列を離れる5月6日まで6戦5勝0敗。一見、この数字だけを見れば、エースとしての役割を完璧に果たしているように見えるだろう。だが、5失点の試合が3度もあり、防御率3.86と、昨年度最優秀防御率(1.97)投手の実力を考えれば、本来の投球とは明らかに違うことは、本人はもちろん、誰もが感じていた。

「あのまま投げ続けることもできたと思います。でも、あのパフォーマンスで誰が喜ぶかという話。『エースだったら投げ続けるべき』という考え方もあったし、逆に、『あのパフォーマンスで投げ続けることが、果たしてエースなのか?』ということも考えました。結果、2〜3試合であれば、今の時期だったらなんとか休める。最終的には、大事な10月、11月に、万全な状態で投げるためにということを考えて、決断しました」

「辛い決断だったのでは?」というこちらの質問に、苦渋の決断に至る心の葛藤を素直に聞かせてくれた。

 筆者が釘付けになったのは、それに続いた言葉だった。

「だからこそ、しっかりケアをして、菊池雄星という、監督・コーチ、ファン、みんなが求めているところに戻してから、自分らしいパフォーマンスを出したいなという気持ちが強かった」

左肩の機能低下で約1ヶ月間、二軍で調整していたエース・菊池雄星

“菊池雄星”というーーー

 これは、「エース」という責任感からの言葉なのか。それとも、ただただ「菊池雄星」という、一人の投手としてのプライドからなのか。その日からずっと、胸に刺さり続けていた。

 そしてようやく、その真意を直接尋ねる機会を得た。

「“菊池雄星”としてです」

 9年目左腕は、きっぱりと答えた。決して、高飛車という意味ではない。努力による確かな自信がもたらす、良い意味でのプライドを胸に闘い続けているのだ。

「みんなが求めている」とは、どのような姿だと受け止めているのだろうか。次のように語る。

「まず、自分が投げてて楽しいと思えること。そして、一番大事なのは『勝つこと』。その次は、見ていてワクワクする投手じゃないといけないと、僕は思っています。去年16勝させてもらって、監督・コーチ、チームメイトも、『今年はどういうピッチングをするんだろう』と期待している中で、自分自身をも誤魔化すような、凌いで凌いで、という投球は誰も期待していないと思う。ダルビッシュ(有)さんや田中(将大)さん、大谷(翔平)もそうかもしれないけど、そういう投手みたいに、戦う前から『今日は打てないや』と思わせる投手が、僕の求めるところです。

 それに、ファンの方の中には、1週間に1回の僕が投げる試合を楽しみにしている人もいるわけで、そういう人たちに対しても、常に胸を張れるピッチングがしたいなと思っています」