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幹事は岩貞祐太 タイガース「平成3年世代」同期会で生まれた絆

文春野球コラム ペナントレース2018

2018/06/24
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岩貞と陽川が交わした約束

“タコライスの絆”で結ばれているのは岩貞と陽川。ともに初の1軍キャンプスタートだった15年2月、宿舎近くのイタリア料理店でささやかな“決起集会”を開いた。ピザ、パスタで腹を満たした後、陽川が「食べたことないから、シメに頼もうや」と注文したタコライスが絶品だった。2人は「キャンプを完走して、最後の夜にまたタコライスを食べに来よう」と声を揃えて店を出た。だが、陽川はその後の練習試合で、ダイビングキャッチを試みた際に左肩を亜脱臼してしまい、戦線離脱。約束を果たすことはできなかった。

今季、防御率1.73と安定した投球を見せている岩貞 ©文藝春秋

 陽川が“借り”を返したのは、1年以上が経過した16年4月29日のDeNA戦。1点ビハインドの5回無死一塁で今永昇太のチェンジアップを完ぺきに捉えて、中堅左に飛び込む逆転2ランを叩き込んだ。

 15打席目で生まれたプロ1号は、マウンドで力投していた岩貞に勝ち投手の権利をプレゼントする最高の一発。試合後、揃ってお立ち台に上がり「おめでとうございます!」と敬語で褒め合った同期入団2人が、タコライスを口にしながら交わしたあの夜の約束を、違った形で果たした、忘れがたき夜だった。

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16年4月29日のDeNA戦、陽川が逆転2ランを放ち勝利した翌日の紙面 ©スポーツニッポン

「遠い存在だった」岩貞とともに入団した岩崎

 岩崎優は、プロ入り前から岩貞を知っていた。国士舘大4年時に、練習試合で岩貞がエースの横浜商大と練習試合で対戦。チームメートをなで斬っていく岩貞の快投をベンチで目の当たりにし「ああいう左投手がプロに行くんだなと思った」と帰りのバスで漠然と思ったという。無名だった左腕は、13年のドラフト6位で1位の岩貞とともにタテジマに袖を通すと、1年目から開幕ローテ入りし、昨年からは中継ぎの一角としてフル回転。今は、「遠い存在だった」という岩貞や、秋山の白星をアシストすべく、腕を振っている。名前の通り、心優しい「ザキさん」は先週の札幌遠征中、8失点した秋山に付き合い、試合後にラーメンを2軒“はしご”して、友の悔しさを紛らわせた。

心優しい「ザキさん」こと岩崎 ©文藝春秋

 陽川が6月3日に今季初めて昇格を果たしたことで、6人が1軍で並び立った。2月の同期会の幹事を務めた岩貞は「他の選手から自分たちの代は仲が悪いと言われていたので、沖縄で同期会をやったんですよ。また近々、2回目をやろうという話にはなってます」と笑った。

 他球団では菊池雄星、今宮健太、筒香嘉智、大瀬良大地など、すでにチームの中心に据えられている選手が多い。虎の「平成3年世代」で突き抜けるのは誰かーー。6人はこれからも交錯し合いながら、高みを目指していく。

遠藤礼(スポーツニッポン)

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